十一月十五日(火)
今日も引き続き市内を探索することになった。昨日一日ではカバーし切れなかったサクレクール寺院等があるモンマルト方面に向かう。
この辺はパリで最も治安が悪いと言われている十八区に位置しているが、だからこそなのか安い古着屋がけっこうあるようだった。高円寺のたんぽぽハウスみたいな店で即席全身コーデを組めたので後でみんなにも見せたい。
ゴッホが住んでいたアパート。
Googleの地図上にはそう出ているが、普通に今も使われている建物なので特に看板などは出ていない。ただ、後で調べたらドアの横あたりに小さなプレートが打ち付けてあったみたいだ。
近所の様子。どこにでも美しいカフェがあるな、パリは。
待ち合わせによく使われるというジュテームの壁。その名の通りいろんな言語によって「愛してる」が書かれている。私は実際に来るまでこんなところがあるとは全く知らなかったのだが、結構人気のスポットらしく写真を撮っている人が大勢いた。
古代エジプト文字まであった。
テアトル広場。この辺は観光客も多くて安心できる雰囲気だ。
と言ってもまあ、実際にパリで何日か過ごしてみてもそんなに危うい感じのするエリアはなかったし、俗に言われている「治安」の感覚ってのはけっこう当てにならないなと思ったりもするのだが……。スリに注意と散々言われている地下鉄でもイヤホンで音楽を聴きながら乗ってるひとは大勢いるし、たいがいの場所は普通に気をつけていれば大丈夫なんじゃないかと思う。
そしてこれがサクレクール寺院。この前八百キロ歩いてサンティアゴの大聖堂で泣いたばかりなので中には入らなかった。教会系はもうしばらく良いかなという気がしている。
サクレクールは丘の上に建っているため、近くからの眺めがとても良かった。パリの町を一望できる。
手すりいっぱいにつけられた「愛の南京錠」。
メジャーどころを抑えるだけであればここまでで充分なのだが、私たちはさらにその先、アフリカからの移民の人たちが多く集うグットドール通りまで行ってみることにした。これは完全に夫の趣味だ。
この辺は十八区の中でも特に危険な場所と言われているが、現在は割と落ち着いているのかそんなにヤバい雰囲気はなかった。多少の緊張感はあるものの、女性でも一人歩きをしている人はいるし、変な物売りもいない。いざとなったらすぐ引き返すつもりではいたけど、基本的なことに気をつけて行動すればまあ大丈夫そうな感じだ。異国感の強い市場や雑貨屋を巡ることができて普通に楽しかった。
せっかくなのでアフリカ料理のお店でランチを食べた。内装がかわいい。最初店員さんの影が見当たらず、キョロキョロしていたらお客さんが代わりにいろいろ教えてくれて嬉しかった。優しいな。
こんな山盛りのプレートが十ユーロという安さだ。味付けは全体的にスパイシー。しかしインド料理の辛さとも中華料理の辛さとも違う、独特の爽やかさがあった。そして付け合わせの野菜がとにかく美味しい。素材本来の甘味を感じる。
お腹いっぱいになったあとは電車に乗ってエッフェル塔へ……行くつもりだったのだが、何かの不具合があって途中の駅で放り出されてしまった。復旧を待つ人もいたがなんとなく怠かったので徒歩で行ってしまうことに。地下鉄の階段を登ると昨日訪れたラ・ロトンドの目の前に出た。
途中、セルジュ・ゲンズブールの住んでいた家に寄った。落書きがいっぱいしてあってかわいそう。そんなに歌上手いとも思えないんだけどなんか好きなんだよね、という話を二人でした。
たまたま見かけた、うっとりするようなアンティーク家具のお店。
パリでいちばん美しいと言われているアレキサンドル三世橋。十九世紀後半に建造されたものだそう。
そのままセーヌ川沿いの道をずっと歩いて行った。けっこう距離がある。
見えた!
これがパリのシンボルマーク・エッフェル塔かあと思い、しげしげと眺めた。
そのままシャン・ド・マルス公園を抜けて地下鉄の駅へ。
夫に「遠くからもよく眺めたいでしょ?」と言われたときは「そうかな?」と思ったけど、こうして見てみるとドアップすぎるよりは全体が把握できた方がいいなと感じた。
宿の最寄駅まで戻り、最後にケーキだけ買って帰った。
美味しそう。そして実際に美味しかった。ラズベリーが砂糖菓子かと思うぐらい軽い食感でびっくり。
これは今日古着屋で買った服。タートルネック、スカート、ジャケット合わせて十八ユーロだった。日本円で三千円いかないぐらい。しかしこうして家に持ち帰ってから改めて着てみるとジャケットは肩パッドが強すぎるしスカートはウェストがゆるすぎる。スカートに関しては縫ったけど、帰国後も着るかというとちょっとどうかな……。
まあそれでも明日はいつものTシャツジーパン以外の格好でパリを巡れるのだと思うと嬉しかった。