パリ アフリカを探せ

十一月十五日(火)

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 今日も引き続き市内を探索することになった。昨日一日ではカバーし切れなかったサクレクール寺院等があるモンマルト方面に向かう。

 

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 この辺はパリで最も治安が悪いと言われている十八区に位置しているが、だからこそなのか安い古着屋がけっこうあるようだった。高円寺のたんぽぽハウスみたいな店で即席全身コーデを組めたので後でみんなにも見せたい。

 

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 ゴッホが住んでいたアパート。

 Googleの地図上にはそう出ているが、普通に今も使われている建物なので特に看板などは出ていない。ただ、後で調べたらドアの横あたりに小さなプレートが打ち付けてあったみたいだ。

 

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 近所の様子。どこにでも美しいカフェがあるな、パリは。

 

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 待ち合わせによく使われるというジュテームの壁。その名の通りいろんな言語によって「愛してる」が書かれている。私は実際に来るまでこんなところがあるとは全く知らなかったのだが、結構人気のスポットらしく写真を撮っている人が大勢いた。

 

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 古代エジプト文字まであった。

 

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 テアトル広場。この辺は観光客も多くて安心できる雰囲気だ。

 と言ってもまあ、実際にパリで何日か過ごしてみてもそんなに危うい感じのするエリアはなかったし、俗に言われている「治安」の感覚ってのはけっこう当てにならないなと思ったりもするのだが……。スリに注意と散々言われている地下鉄でもイヤホンで音楽を聴きながら乗ってるひとは大勢いるし、たいがいの場所は普通に気をつけていれば大丈夫なんじゃないかと思う。

 

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 そしてこれがサクレクール寺院。この前八百キロ歩いてサンティアゴの大聖堂で泣いたばかりなので中には入らなかった。教会系はもうしばらく良いかなという気がしている。

 

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 サクレクールは丘の上に建っているため、近くからの眺めがとても良かった。パリの町を一望できる。

 

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 手すりいっぱいにつけられた「愛の南京錠」。

 

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 メジャーどころを抑えるだけであればここまでで充分なのだが、私たちはさらにその先、アフリカからの移民の人たちが多く集うグットドール通りまで行ってみることにした。これは完全に夫の趣味だ。

 

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 この辺は十八区の中でも特に危険な場所と言われているが、現在は割と落ち着いているのかそんなにヤバい雰囲気はなかった。多少の緊張感はあるものの、女性でも一人歩きをしている人はいるし、変な物売りもいない。いざとなったらすぐ引き返すつもりではいたけど、基本的なことに気をつけて行動すればまあ大丈夫そうな感じだ。異国感の強い市場や雑貨屋を巡ることができて普通に楽しかった。

 

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 せっかくなのでアフリカ料理のお店でランチを食べた。内装がかわいい。最初店員さんの影が見当たらず、キョロキョロしていたらお客さんが代わりにいろいろ教えてくれて嬉しかった。優しいな。

 

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 こんな山盛りのプレートが十ユーロという安さだ。味付けは全体的にスパイシー。しかしインド料理の辛さとも中華料理の辛さとも違う、独特の爽やかさがあった。そして付け合わせの野菜がとにかく美味しい。素材本来の甘味を感じる。

 

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 お腹いっぱいになったあとは電車に乗ってエッフェル塔へ……行くつもりだったのだが、何かの不具合があって途中の駅で放り出されてしまった。復旧を待つ人もいたがなんとなく怠かったので徒歩で行ってしまうことに。地下鉄の階段を登ると昨日訪れたラ・ロトンドの目の前に出た。

 

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 途中、セルジュ・ゲンズブールの住んでいた家に寄った。落書きがいっぱいしてあってかわいそう。そんなに歌上手いとも思えないんだけどなんか好きなんだよね、という話を二人でした。

 

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 たまたま見かけた、うっとりするようなアンティーク家具のお店。

 

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 パリでいちばん美しいと言われているアレキサンドル三世橋。十九世紀後半に建造されたものだそう。

 

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 そのままセーヌ川沿いの道をずっと歩いて行った。けっこう距離がある。

 

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 見えた!


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 これがパリのシンボルマーク・エッフェル塔かあと思い、しげしげと眺めた。


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 そのままシャン・ド・マルス公園を抜けて地下鉄の駅へ。

 夫に「遠くからもよく眺めたいでしょ?」と言われたときは「そうかな?」と思ったけど、こうして見てみるとドアップすぎるよりは全体が把握できた方がいいなと感じた。


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 宿の最寄駅まで戻り、最後にケーキだけ買って帰った。

 

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 美味しそう。そして実際に美味しかった。ラズベリーが砂糖菓子かと思うぐらい軽い食感でびっくり。

 

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 これは今日古着屋で買った服。タートルネック、スカート、ジャケット合わせて十八ユーロだった。日本円で三千円いかないぐらい。しかしこうして家に持ち帰ってから改めて着てみるとジャケットは肩パッドが強すぎるしスカートはウェストがゆるすぎる。スカートに関しては縫ったけど、帰国後も着るかというとちょっとどうかな……。

 まあそれでも明日はいつものTシャツジーパン以外の格好でパリを巡れるのだと思うと嬉しかった。

パリ 市中散歩

十一月十四日(月)

 昨夜はルーヴルの余韻が激しく残っていてあまりよく眠れなかった。ずっと興奮しっぱなしだとさすがにつらいので、今日は市中をのんびり散歩してまわることにする。

 

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 十時。宿から二キロ離れたところにある凱旋門を目指して歩き始めた。地下鉄に乗って行く案もあったが、どうせならパリの街並みをゆっくり味わいながら行きたいという話になったのだ。夫婦でそういう気持ちが一致するのは嬉しい。


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 なんでもない道のはずなのに、ここがパリだと思うとそれだけでウキウキしてしまう。やっぱり昔から胸の奥底にあった憧れは根強い。これまでに訪れたいろんな国のいろんな文化に対する「あれが好き、これが好き」という記憶のディティールを全部破壊され、圧倒的な美と魅力によって心が捻じ伏せられていくのを感じた。パリ、好きだ。大好きだ。

 確かに全体として物価は高いし、場所によって治安が悪いのもある程度は事実なのだろうけど、最悪スリや強盗に遭ってもこの街を嫌いにはなれないと思った。


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 広い公園を通り抜けた。何かの授業の一環なのか、紺のコートを着た子供たちが大勢はしゃぎ回っていた。


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エトワール凱旋門

 

 三十分程して凱旋門に到着。ここはナポレオンの指揮によって作られたんだけど、実際に完成したのはその死後だったんだよね、という夫の解説を聞く。


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 地下入り口を通って近くまで寄ってみた。


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 内部の彫刻もすごい。足元には第一次世界大戦をはじめとする様々な戦争で亡くなった兵士を祈念するプレートがいくつも埋め込まれていた。


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 裏手側にも彫刻があった。こちらは『1814年の抵抗』という題の作品。


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 うさたろも凱旋。


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 ひと通り凱旋門を眺めた後は近くのシャンデリゼ通りを散歩した。ここはCartierBVLGARIなど多くの高級店が立ち並んでいる。

 途中、もっとずっと手頃な価格帯の服屋を見つけて、あれやこれやといろいろ見て回ったのが楽しかった。気に入った服は試着したら明らかにサイズが大きかったので買わなかったけど、それでもひさしぶりに乙女心が満たされて嬉しい。泣きそうになった。


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 そのままオルセー美術館やルーヴルがある方に向かって進んでいく。


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 有名なコンコルド広場にたどり着いた。


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 遠くのほうにエッフェル塔が見える。手前にあるのはエジプトのルクソール神殿オベリスク(記念碑)だ。


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 十二時半。昼ご飯を求めてパン屋さんへ。バケットカヌレを買った。


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 チーズと生ハムを買い求めてスーパーに入ったら急に大量の日本語が目に飛び込んできて「?」となった。確認したらどうも日中韓系の食料品を中心に売っているお店だったようだ。嬉しいけど今の気分ではない。


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 ストロングゼロ十ユーロは笑える。輸入ってお金がかかるんだなと思った。


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 この辺はサンタナ通りといって日本人街になっているらしい。ヨーロッパ式の建物群に日本語が張り付いている様子は妙な異国感があっておもしろかった。


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 どうにか適当なスーパーでサンドイッチの具材を手に入れ、ルーヴルがあるあたりまで戻った。その辺のベンチに座ってピラミッドを見ながらお昼ご飯。日差しが暖かかった。


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 そのままの流れでおやつも食べた。実はこれが人生初カヌレだ。こんがり焼けてサクサクしている外側と、もっちりした食感の中身がいいバランスだ。味もただ甘いだけではなくブランデーが効いていてとても美味しかった。フランスにいる間にカヌレ研究会を創設する必要がある。


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 お腹いっぱいになったところでお散歩を再開。セーヌ川が見えてきた。


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 水浴をする鳥たち。


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 向こうにあるのが有名なヌフ橋、通称ポンヌフだ。『ポンヌフの恋人』、観たことないんだよね。シティの語源になったシテ島も見えてきた。


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 橋を渡ってシテ島へ。川を船が行き来する様子を見て、夫が「ここから飛び乗りたくなるような眺めだよね」と言う。すかさず「名探偵コナンみたいにね」と返したら「いやジャッキー・チェーンかな」と訂正された。


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 パリのクマたち。


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 ノートルダム大聖堂。三年前に起きた火災でけっこうな範囲が焼失してしまい、現在は改修中のようだ。


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 歩いていたら地面にカミーノのマークを見つけた。ここも巡礼路になってるのかと吃驚。ちなみにパリからサンティアゴまではだいたい千五百キロぐらいある。


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 今日は行きたいカフェがあるのでそのままずっと散歩。


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 ラ・ロトンド。ピカソ藤田嗣治など多くの文化人が通ったとされる老舗カフェらしい。しかしそのわりには全体的にそこまで高くもなく入りやすい雰囲気だ。赤で統一された内装も美しかった。

 明日、明後日のパリでの過ごし方を相談しながら過ごす。

 

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 夜はまたパスタを作った。今日はペペロンチーノ風。


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 食後のおやつはマカロン。宿の近くにピカールという冷凍食品専門の店があり、試しに買ってみたのだ。十二個入りで五ユーロ(約七百円)という安さだった。マカロン好きには嬉しい。

 フランスはいろんなものが高いイメージだったけど、こと洋菓子に関しては日本よりも安価に美味しいものが食べられるのかも……とこの時思った。明日以降も油断せず調査を進めていきたい。

パリ ルーヴル美術館

十一月十三日(日)

 今日はルーヴル美術館に行く日。大混雑が予想されるため、開場時間の九時前には着くように宿を出た。

 

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 地下鉄を乗り継いで向かう。後になって思い返してみるとこの時がいちばんテンションが高かった。昨日は疲れていてそんなことを思う余裕はなかったけど、やっぱりこうして改めて周りを見ると駅のベンチの形さえおしゃれに感じるし、電車内にはベレー帽を被りこなしている女性が何人もいて、ただ移動しているだけでなんだかいい気持ち。

 それにパリといえば昔から憧れていた大都市だし、その中でも特に目玉と言われているルーヴルに行くともなればさすがに期待せずにはいられない。一日で膨大な数の美術品を鑑賞するにあたって、体力的な不安がないでもなかったが、それでもこの段階ではワクワクのほうがずっと勝っていた。

 

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 八時半。いよいよ到着。前門からしてかっこいい。すでに興奮は頂点に達していた。ついにここまで来たんだね!とはしゃいで写真を撮りまくる。

 

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 ルーヴルのシンボルであるピラミッド。

 

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 開場三十分前なのにもうけっこうな数の人が並んでいた。これでも全然前のほうだ。本当に早めに来てよかったと思う。

 列に並んで朝ご飯代わりのチョコをかじりながら、入場後すぐモナリザを見に行こうと言う話をした。事前に調べた情報によるとモナリザ周辺は九時十分頃(!)から混雑し始めるらしく、どうせ絶対に見るつもりなら最初に抑えた方がいいのではないかと思ったのだ。それってアトラクション感覚のミーハーな考えかな……という心の引っかかりを若干感じたものの、三万点以上の美術品を目の前にしたらどのみち自分など軽薄な存在にしかなり得ないので、もうそれでいいやということになった。

ルーヴル美術館の収蔵数は三十八万点以上。その中で表に出ているのが三万五千点。

 

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 ルーヴルはこんなにすごい宮殿みたいな建物なのに、入場はこのピラミッドから始まるらしい。変なの。

 

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 九時、開場。急げ!私たちと同じことを考える人は山ほどいるらしく、みんな一斉にモナリザ前へ向かっているのがわかった。

 

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 初っ端からいきなり見事な彫刻群が。しかし全員華麗にスルー。サモトラケのニケですら素通りされていた。

 

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 おっ!?あれって有名な『民衆を導く自由の女神』では?!と一瞬ビビったがやっぱりこれもいま立ち止まって撮る人はいなかった。とりあえず目的はモナリザだ!

 

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 モナリザ待ちの整理列。さすがに並んでいる人はまだいなかった。絵の前に一列分の人だかりができている程度だ。

 

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 というわけでいざ!ご対面!

 これが幼い頃から何度も何度もいろんな情報媒体で目にしてきたあの有名絵画・モナリザなのか……、という感動はあったものの、周りの絵画に比べるとサイズは小さいし、何より厳重に守られすぎていてよく見えない……遠い……というのが素直な感想だった。まあぶっちゃけよく聞く話ではある。それでもいろんなひとの気持ちを急かしたり待たせたりするパワーがこの絵にはあるのだ……と思うと何だか不思議な感じがした。絵はただ美しいというだけではなく、社会的な意味を持つなあ。

 

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 モナリザの呪縛から解き放たれたところでようやく順路を戻って『民衆を導く自由の女神』のところまで来た。ニューヨークにある自由の女神像の元ネタだ。

 

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 こちらは『ナポレオン一世の戴冠式』。

 この辺でけっこう冷静になってきて、ようやく館内地図を確認しようという話になった。ルーヴルは「ドゥノン翼」「リシュリー翼」「シュリー翼」と三つのエリアに分かれており、いま私たちがいるのは「ドゥノン翼」の部分らしい。有名絵画が多く収蔵されているここがいちばん人気のエリアだそうだ。

 

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 サモトラケのニケギリシャで別のニケ像を見て以来ずっと気になっていて、ようやく見ることができた。とか言うくせにさっきはあっさり通り過ぎて本当にごめんなさい……。

 

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 ギャラリーダポロン。ルイ十四世の指揮によってデザインされた部屋とのこと。飾ってある絵がどうという以前にこの部屋自体がひとつの芸術だ。

 

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 正教会イコン画たち。

 

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 十時。もう一度モナリザがある部屋に戻るとすでに行列が出来ていた。みんな絵の前で絶妙な笑みを浮かべて記念撮影してる。

 

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 かなりざっくり見ているはずなのに作品数が多すぎて頭がパンクしそうになる。ルーブルに一日しか時間を割かないのはやっぱり無謀だったかと少し後悔した。もしどうしても見切れなかったらパリ滞在中にもう一度来ようと二人で話し合う。

 

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 「うさたろはどの絵が好き?」「あれ」

 とても体力が保たないので時々椅子に座って休みながら鑑賞を続けた。

 

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 美しい天井画たち。ギリシャの神々が描かれている。

 

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 それで気づいたらいつの間にかギリシャ・エジプトのコーナーに突入していた。体力が追いつかないから今回はできるだけ西洋芸術に的を絞ろうと話していたはずなのに、恐ろしい。そして一旦足を踏み入れるとけっこう真剣に見てしまう。

 

 印象に残った作品全部を記録しようとするとキリがないので、ここから先はできるだけ数を絞ってメモしておく。

 

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 モネの絵。モネといえば淡いピンクやブルーのイメージがあり、真っ白な雪山を描いた作品を手がけているのは少し意外な感じだった。

 

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 これはもうちょっと「っぽい」雰囲気。

 

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 一眼でルノワールとわかる筆遣い。

 

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 額縁だけの展示コーナーなんてものもあった。確かに、これだって精巧な技術が施された芸術品だ。

 

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 ニコラ・ド・ラルジリエールという画家の絵。手の習作らしいのだが、一見したときにフェティッシュな魅力を感じて好きだった。

 

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 『ぶらんこ』で有名なジャン・オノレ・フラゴナールの絵。夢みたいな色彩とやわらかい線が素敵だなあと思ってふらふらと見入ってしまった。

 

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 桃みたい。

 

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 マリー・アントワネットの部屋の復元。本丸は同じパリ市内にあるヴェルサイユ宮殿なのだろうけど、ここでもたくさんロココ時代の調度品を眺めることができた。

 

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 いろんな種類の石が埋め込まれた机。これひとつで小さな博物館のようだ。これがじっさいにつかうっとりする。

 

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 ロココの悪趣味な部分。

 

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 十五時。せっかくの機会なので閉館まで粘るつもりだったが、さすがに集中力が切れてきた。フランスではなるべく節約して過ごそう!という誓いを破り、併設のカフェで一度落ち着くことに。コーヒーを飲んだらカフェインの効果で再び脳が活性化されてきた。これなら残りの数時間もがんばれそうだ。

 

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 ナポレオン三世の部屋の復元が近くにあるというので行ってみた。こちらはみんなが集まるサロン。


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 落下するシャンデリアに刺さって死にたい。


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 休憩中にフェルメールの『レースを編む女』があると知り、再び西洋絵画のコーナーを目指すことにした。


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 好きな構図の絵。ドメニキーノというひとの作品だった。知らない画家の名前を美術館で覚えて帰るのは楽しい。

 

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 「観る」は最初から諦め気味だったけど、だんだん「見る」さえ通り越して「居る」になってきた。逆に贅沢かもしれない。


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 ひと通り絵画コーナーを巡った後は階を降りてフランスの彫像群を眺めた。


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 こちらは少し時代を遡ってロマネスク様式の磔刑像。


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 彫刻はいろんな角度から眺めることが出来て楽しい。絵画を見るのとはまた別の神経を使うので、少しだけ頭が休まるような気もした。


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 最後は夫がいちばん気に入ったというジョルジュ・ド・ラ・トゥールの絵をもう一度おかわりして締めた。光の表現と陰影の付け方、少し不穏な雰囲気が良いとのこと。


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 十八時。途中リタイアする案も出ていたが、結局気がついた時には閉館ギリギリの時間になっていた。とてもじゃないが全部を見切ることはできないのに、かといって諦めて帰るのは惜しい……という状態だったので、美術館のほうから終わってくれて本当にありがたい。という言種はどうなんだ。

 なんにせよ、「疲れたけどなんだかんだめちゃくちゃ楽しかったね!」と言い合って一日を終えることが出来たのでよかった。


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 夕飯は細々と自炊。最近夫に作ってもらうことばかりだったので、今日は私が料理係を担当した。カルボナーラもどき美味しい!

 明日はシャンデリゼ通りを散歩する。

サンティアゴ スペインにキスしたい

十一月十一日(金)

 昨日思う存分ダラダラしたおかげで今日は目覚めがよかった。体力だけでなくやる気・気力も充分に回復している。起きてさっそく支度をするとまずは二人でバルに出かけた。明日にはサンティアゴを発ってフランスのパリへ向かうため、大好きなスペインのバル文化とももうそろそろお別れだ。地元のおばあちゃんが切り盛りしている、よくあるローテンションな店で今のうちにのんびりしておきたかった。

 

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 薄めのカフェ・コン・レチェを飲みながら詩を書いたり、明日乗る飛行機の確認をしたりした。結局こういう何気ない時間がいちばん愛おしい。

 

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 十一時半。毎日十二時から行われている巡礼者向けの礼拝に参加するため、大聖堂へ。クリスマスに向けた飾り付けがもう施されていて少し切なかった。年末も近い。


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 何回も前を通っているのに、中に入るのは初めてだ。礼拝がはじまるまでまだ時間があったのでちょっとだけその辺を探索することにした。この建物のどこかに聖ヤコブの遺骸が埋葬されているのだと思うとなんだか緊張してくる。ようやく旅の本筋に戻ってきた感じすらした。


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 柵で区切られたいくつかの部屋があり、その中で告解している人の姿をチラホラ見かけた。さすがは世界各国から人が集まる大聖堂なだけあって対応言語(英語、スペイン語)ごとにスペースが別れているっぽい。

 幾人もの人々から打ち明けられた罪を抱え込んで生きていかねばならない司祭の気持ちについて考えた。


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 剥がれかけた古い壁。


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 十二時。予定時刻通りに礼拝が始まった。使用言語はスペイン語なので例によって何を話してくれているのかはまったくわからない。せめてキリスト教徒だったらなんとなく予測がついたのかもしれないけど、そういうわけでもなかった。それでもこの厳かな雰囲気に浸って、自分自身に向き合うことができたらそれで充分なのかなあと個人的には思う。

 最後のほう、おそらく司祭が「隣人を愛しなさい」的な発言をした際に、礼拝に参加していたすべてのひとが近隣の人々と肩を抱き合ったり目を見つめ合ったりして心を通わせようと努めていたのが印象に残った。

 

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 礼拝が終わった後は巡礼事務所へ。ここで巡礼の完了証明書を発行してもらうことができる。手続きの方法はかなり電子化されており、インターネット上のプラットフォームに必要な事項をすべて記入すると待合番号を発券してもえるような仕組みになっていた。よく整理されたお役所みたいだね。


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 窓口でいくつかのやり取りをした後、無事発行完了!

 右の縦長なほうが巡礼証明書で、左が歩いた距離の証明書だそう。後者は有料で、保管用の筒と合わせて全部で五ユーロした。バチバチに本名が書いてあるのでそこは加工アプリで隠してある。帰ったら家の壁に貼ろう。


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 これにてミッションオールコンプリート!

 ということで、一旦落ち着くためにいい感じのバルへ駆け込んだ。サンティアゴに着いたらやりたいと思っていたことのすべてがつつがなく済んでくれて清々しい気持ちだ。

 

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 お昼ご飯はハンバーガー。食べ終わった後も一時間以上ダラダラして過ごした。

 

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 食後はピルグリム博物館を訪れた。まず巡礼とは何か?どういった意義があるのか?という話からはじまり、世界各地に存在する巡礼路の紹介やサンティアゴが発展していった歴史など、多岐にわたる情報が詳しく解説されている。日本の熊野古道西国三十三所巡礼に関する展示品もいくつかあった。


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 十三〜四世紀頃に作られた聖ヨハネ像。この頃の彫像は作画が荒くて好きだ。なんともいえないゆるいかわいさがある。


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 こちらは現代のピルグリムに関する展示。個人の寄贈品のようだ。


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 四十年以上前の日本人巡礼者による手書きガイドブック。書き込みの細かさもさることながら、「こんなに大きくて重そうなノートを持って巡礼したの?!」という驚きを感じた。気合の入り方が違う。


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 こちらは各地から伸びるサンティアゴの巡礼路図。次やるなら「ポルトガルの道」あたりを歩くのが楽しそうだよね、という話をした。


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 中世の巡礼者と現代の巡礼者の比較。


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 貝殻つけすぎだろう。


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 ULTREIAの字と共に飾られているいくつもの杖。


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 様々なヤコブ像。


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 思っていたよりも内容が濃くてけっこう疲れた。写真を載せた以外にも、ピルグリムの格好をした聖ヤコブの絵画や像、サンティアゴ大聖堂の成り立ちに関する説明など、さまざまな興味深い展示が並んでいる。


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 好きにメッセージを書いていける場所があったのでいまの素直な気持ちを綴っておいた。アホっぽい字だ。

 

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 本日二件目の店、そして二杯目の酒。明日にはスペインを離れるのだと思うとすぐには宿に帰りたくなかった。

 

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 今日はなかなかやるな。三件目。スペインの伝統的な食文化を最後にもう一度味わっておこう!ということでタパスを食べて締めた。どの料理もめちゃくちゃ美味い上に店の雰囲気もよく、そのわりそんなに値段も高くなくて最高。人気店なのか繁盛していて忙しそうだったが、どんなにオーダーが溜まっていても店員さん同士和気藹々としてのんびり働いている様子が見られ、そこもよかった。すべての飲食店がこのノリだったらいいのに。

 とても満ち足りた気持ちだったので、極力携帯は見ないようにして、二人でこれまでの思い出を振り返ったり妄想の旅プランについて話したりして過ごした。いい夜だった。

 

十一月十二日(土)

 八時。宿をチェックアウトした。この前郵便局で回収した荷物をバックパックに統合するとまあまあな重さに……なるかと思われたが、意外とそうでもない。今日乗る飛行機は八キロまで機内持ち込み可能とのことだが、余裕でクリアできそうな重量感だ。まあもしダメだったらその場で服とか捨てようかなと思う。

 

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 町を出る前にバルで朝ご飯を食べた。パリではなるべく外食を控えて節約する予定なので、優雅にこういうことができるのもいまのうちだ。店主の娘さんがレジカウンターで一生懸命お金を数える練習をしていてよかった。

 

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 朝の大聖堂前を通ってバス停へ。さすがにこの時間から到着している巡礼者はいなかった。

 

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 いまさらながらスペインから離れるのが惜しく、「スペインにキスしたい!」と言うと「地面とかにするしかないよね」と返ってきて笑った。

 

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 空港に向かうバスの中。一週間以上前に歩いた道をハイスピードで逆走していく。

 

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サンティアゴ・デ・コンポステーラ空港


 十時半。十三時のフライトには少し早かったが、到着。もういまさらやることもないのでさっさとチェックインや手荷物検査をクリアしてしまうことにした。

 

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 「あの辺は充電スポットもたくさんあるし寝床によさそうだね」と、最早空港を宿として認識している嫁。俺。

 

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 十三時十五分。フランスのボーヴェ行きの飛行機に搭乗。座席指定していなかったので夫婦で前方後方バラバラの席になった。久しぶりの移動で気疲れしたのかフライト中はずっと昼寝。


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△パリ・ボーヴェ・ティレ空港

 

 さすが距離が近いので二時間足らずで到着。ここからさらにシャトルバスに乗ってパリ市内に向かう。チケットを買ったら一人十八ユーロ(二千六百円)もした……。電車を使えばもっと安く済んだのかもしれないけど、時すでに遅し。着いてすぐの出口のところに発券機が置いてあったら油断して買っちゃうよね。


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 十七時。ついに念願のパリへ。けっこう外れの方で降ろされたせいもあり、想像していたよりも牧歌的な雰囲気があった。


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△スリに注意

 

 しかし治安が悪いと言う話は散々聞いているので気は緩めずに行く。これは地下鉄にあったポスター。

 

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 フランスはスペインと違って日が暮れるのが早く、宿にチェックインする頃にはすっかり暗くなっていた。スーパーで夕食の材料を買ったら今日はおしまい。いろいろ不安もあるけれど、明日からの観光が楽しみだ。

サンティアゴ 巡り合わせで生きていく

十一月九日(水)

 朝起きるとさすがに胸が切なかった。もう歩かなくていいんだと思うと心にぽっかり穴が空いたかのようだ。その代わりに何をしたらいいのか、以前はどんな感じで旅をしていたのか、すぐには思い出せそうにない。宿に置いてあった、不要なものを回収してくれる箱にずっと使っていた杖を入れて、何の感慨も湧かなかったことがあとから思い返したときに引っかかった。

 

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 九時半、最後にお世話になったアルベルゲをチェックアウトした。サンティアゴ以降いい宿に当たることが多かったが、昨日のところは特にピースフルだった気がする。

 バスが出る時間まで余裕があったので、海辺へ。


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 売店でスイカ味のファンタを買って飲んだ。意外と薄い果汁のあの感じがよく再現されている。


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 しばらくの間ベンチに座って二人でぼんやりしていた。飼い犬といっしょに何もせずに突っ立ってるおじさんがいて、漠然といいなあと思う。人間、スマートフォン以外にも何か無心で眺められるものが必要なんじゃないかという話をした。犬とか、海とか。


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 何をするわけでもなく浜辺のほうにも降りてみた。


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 大きなシーグラスを拾った。嬉しい。せっかくだからきれいな貝殻もひとつ持って帰りたかったけど、ひっくり返して実があった部分を見たらなんとなく生きていたときの感じがまだあったのでやめておいた。


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 それにしても天気がいい。もし到着が今日だったら日没の瞬間もはっきり見られたかも、という話になりかけて、でもそんな仮定は無意味だなと思った。何を言ったって結局のところは巡り合わせで生きていくしかないのだから。


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 出発時間が近づいてきたので、町まで引き上げてバルで少し休んだ。


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 十一時四十五分。サンティアゴ・デ・コンポステーラ行きのバスに乗車。信じられない。四十日以上歩きだけで移動してきたわけだから当然いろんな意味でショックがあった。自分の中の禁忌を破るような感覚と、以前は当たり前のように使っていたモノに対して感じる新鮮さ。しかも三時間で目的地に着いてしまうらしい。ここに来るまで五日もかかったのに……?

 どのみちスペインから日本まで歩きで帰るわけにはいかないので、どこかの時点で迎えなくては行けないタイミングではあると思うけど、やっぱりちょっと抵抗がある。逆走カミーノをする人の気持ちがなんとなくわかった。

※逆走カミーノ…まれにサンティアゴで折り返して自宅や出発地まで歩いて帰るという人がいる。


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 とはいえすぐ慣れた。バスって全然疲れないし早いな。画期的だ。


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 もうこんなところまで来ちゃった。


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 ものの十五分で一昨日泊まったセーの町を通過。私は平気だったが、夫はひさしぶりの乗り物に三半規管をやられたようでかなり辛そうにしていた。かわいそうに。

 

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 十四時半。サンティアゴに到着。呆気ないものだ。それでもまあ、帰りがバスだったからといって私たちの歩いた九百キロが無効になるわけではないよな、とこの時にはかなり心の整理がついていた。

 

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 予約してあるゲストハウスのチェックイン時間が十六時からだったので、近くのお店で遅めのお昼ご飯を食べた。ラザニアが美味しい。しかし時間が来ても該当住所のアパートに人がいる様子がないので、不審に思っていたら別の階の住人が「そこは先月末で潰れたよ」「この前も同じようなトラブルがあったの」と教えてくれた。なんてことだ。予約サイトを通じてお金はもう払ってるのに。とはいえいない相手にごねても仕方がないので、返金してもらえるようサイトに掛け合って急遽別の宿を抑えることにした。

 

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 三度目の大聖堂。通り過ぎる時、「明日からフィステーラへの道が始まるから油断できないね」と言ったらウケた。


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 十七時。なんとか今日の寝床を確保することに成功した。受付の女性は親切でフレンドリーだし、飼い猫も三匹いていい感じ。


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 部屋も清潔感があってきれいだ。ここにしてよかったと思った。


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 しばらく休んでから郵便局へ荷物を取りに行った。巡礼を始めた当初、少しでもバックパックを軽くしようと不要なものをサンティアゴまで送っておいたのだ。巡礼者向けに四十五日間局留めにしておいてくれるサービスがあって助かった。

 段ボールがボコボコに潰れていてちょっと心配になったけど、中身はなんともない。夫のノートパソコンも無事だ。よかった。


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 巡礼者キティちゃんのTシャツが売られていてかわいかった。

 

十一月十日(木)

 十時過ぎまで寝ていた。本当は今日のうちに巡礼事務所で巡礼証明書を発行してもらったり、大聖堂で礼拝に参加したりしたかったのだが、二人ともやる気がないので断念。必要なことは全部明日に回すことにした。

 

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 その代わりゆっくり身支度して、一ヶ月ぶりに化粧もしてから宿を出発。お腹が空いていたので何か食べにいくことにした。


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 と、思ったがそれも怠かったので売店で生ハムとチーズを買って宿で食べることに。パンは近くのパン屋さんまで足を伸ばして買いに行った。いい匂い。


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 宿の中庭で食糧を広げていたら猫が邪魔しにきてくれて嬉しかった。たいして懐いてるわけでもないくせに、現金なやつだ。これは人間用の味付けがしてあるからきみにはあげられないんだよう、と諭していたら途中でぷいとヘソを曲げてどこかに行ってしまった。

 食べ終わった後はまたずっと昼寝。ひさしぶりに弛緩し切った時間の使い方をしている。

 

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 十七時過ぎ、ようやく起きて外に出た。何かしたい気分だったが、このままベッドに転がっていても上手くスイッチが切り替わらないのでひとまず適当なカフェを目指すことに。


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 夫がカフェ・コン・レチェを頼み、私が酒を飲むというちょっと珍しい感じになった。スペインにはティント・デ・ベラーノという赤ワインベースの簡単なカクテルがあり、それがサングリアに似た味でとても美味しい。炭酸飲料水で割るだけだから自宅でも簡単に作ることができるし、実際、日本にいたときはたまに飲んでいたんだけど、そういえばいざこっちに来てからは店で頼んだことがなかった。

 

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 夜は巡礼者メニューの食べ納め。と言いつつ明日も普通に食べるかもしれない。最後に大きなリブステーキを食べられて嬉しかった。

 

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 月がきれいだった。

続・カミーノ 果てへ

十一月八日(火)

 続・カミーノ巡礼五日目。いよいよ最後の日が来た。一応、明日からサンティアゴに何泊か滞在する予定ではあるが、巡礼路を歩くのは今日までだ。この町からフィステーラまで十二キロ、そこからさらに三キロ歩けば目的の岬まで辿り着く。

 先に宿を出ていく巡礼者に向かって「ブエン・カミーノ!」と声をかけながら、我ながらいいなあと思った。もうこれで終わりだからこそ、だよね。

 

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 オスピタレロとの別れを惜しみつつ、九時出発。海辺から道がスタートした。漁師の人たちが働いている姿が見える。

 

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 空は曇り。晴れていたらもっときれいだったんだろうなあとは思いつつ、これはこれで果てにふさわしい雰囲気がある。

 

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 巡礼者像。

 

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 かもめたちも朝の散歩を楽しんでいる。

 

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 個性的なベンチがあった。実際に使われているところを想像してみると、全員がそっぽを向いて座る感じになっておもしろい。

 

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 一旦海を離れて町の中に入っていく。

 

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 この狭い小道から山のほうへ抜けていくようだ。最後の最後でいい道を歩かせるなあと思った。

 

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 今日は距離こそ短いが、けっこうアップダウンが激しく険しい道も多い。信じられないぐらいの登り坂を前にして途方に暮れていたら、たまたま向かい側から歩いてきた人が「この坂は意外と短いよ」と教えてくれた。ありがたい……。

 

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 振り返って見る町の景色もきれい。がんばろうという気持ちになれる。

 

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 十時。しばらく進んだところでまた海が見えてきた。おそらくあの先にあるのがフィステーラの町だ。

 

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 車道沿いを歩いていたら雨が降ってきた。しかもなかなか勢いがある。

 

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 とはいえ向こうの空は晴れているのであまり長いことは続かなそうだ。

 

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 一生に一度しか来ない町を通り過ぎながら、「サンティアゴに着いたときはいろんな思い出が脳裏をよぎったけど、今はきちんと未来に向かって歩いている感じがする」という話をしたのが印象に残った。

 

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 再び山道に入っていく。

 

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 海だ。

 

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 ものすごい下り坂だ。ここまで来るともはや重力の存在を感じる。前に倒れないようにするのが大変だった。

 

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 十一時半、ついに到着。結局一度も休憩を挟まないまま十二キロ歩いてしまった。

 

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 濡れた砂浜が鏡みたいに光っている。すべてが真っ白で、海と陸の境目がとても曖昧に感じた。

 

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 雲間から太陽が見える。

 

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 旅がはじまってからずっと、この海のそばを歩いてきたような気さえしてきた。

 

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 本当は砂浜を歩いて町まで辿り着きたかったのだが、途中で天然の川が出来ていたので断念。迂回することにした。

 

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 上の道を歩いていたら、ロバ・犬連れの巡礼者とすれ違った。思わずちょっと反応してしまったけど、きっとこれまで何億回もいろんな人からありとあらゆる質問を浴びせられてきたんだろうなあと考え、そっと通り過ぎることに。二匹ともかわいかった。

 

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 十二時半。アルベルゲにチェックインした。部屋に荷物を置いて、洗濯物だけ済ませてから岬を目指す。

 

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 が、その前にひとまずお昼ご飯だ。朝食べたっきりだったのでお腹がペコペコだった。揚げ物だらけのプレートが胃に染みるぜ。店内BGMがノリノリで、お店のママが踊りながら料理を持ってきてくれたのが良かった。

 

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 時刻は十五時ちょっと前。岬では西陽が沈んでいくところを見たかったので、カフェ・コン・レチェでも飲みながらのんびり時が経つのを待つことにした。思いがけないラテアートが嬉しい。

 

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 十六時。我慢できなかったので歩き始めてしまった。ついに町から岬へ。


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 通りがかった教会の前で手作りのポストカードを配っているおじいさんがいた。かわいい絵だ。話を聞くと、おじいさんはもう九年以上歩いて旅してるらしい。さすが最後ともなるとすごいひとに会えるな。


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 最後の道。バックパックがないと体が軽い。往復六キロという距離はまあまああるのだが、たいして負担にも感じなかった。


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 十六時半、ついに到着。ここがかつては「地の果て」と信じられていた岬かあ。さすがの空気感だなあ。

 と言いたいところだが、実際はけっこう観光名所化していて人も多かった。海特有の壮絶さはあるものの、場所全体に厳かな雰囲気はそれほどない。やっぱりなあ、と内心思った。


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 結局、生きながら辿り着ける場所に果てなんてないのだと思った。それは永遠に行けないところにしか存在しない。例えば、心の中とか。でも、精神のどこかに呼応するものは感じた。


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 道標に刻まれた「km0,000」の字。これを見ても、不思議と終わったなあという感じはしなかった。道中でも二人で話したが、サンティアゴに着いたときとは心の持ちようがぜんぜん違う。

 いまは旅の終焉を惜しむ気持ちよりも、新しい冒険に向かって過去と統合されていく自分により強く意識が向いていた。


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 岩場を降りて先のほうまで行けるようだったので、がんばってギリギリのところまで行ってみた。強風がすごく、スマートフォンぐらいだったら手を離した瞬間にどこかへ飛ばされてしまいそうだ。しばらく海を眺めてから上に戻った。


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 「これがSEKAI NO OWARIかあ」と感心するうさたろ。うさたろもよくここまで着いてきてくれた。がんばったで賞をあげたい。


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 遠くで雨が降っているのがはっきりと見えた。


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 灯台が光っていた。


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 せっかくなので日没までもう少し待つことにした。曇っていて何も見えない可能性はあるが、粘らず諦めて帰る気にはなれない。

 

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 すぐ隠れてしまったけど、窓から太陽が見える瞬間もあった。

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 十八時。期待して外に飛び出してみたが太陽は見えない。でも、空が暮れていこうとしているのはなんとなくわかった。


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 十八時二十一分。日没。


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 道中には街灯がないため、真っ暗になる前に岬を後にした。


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 ちょうど町に着くのと同じタイミングで教会の鐘が鳴って、そのとき初めて切なさを感じた。


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 宿に戻るとちょうど夕飯の時間だった。ドネーション(寄付)でベジタリアン料理を振る舞ってくれるという。そんなにお腹が空いているわけでもなかったが、せっかくなので少しお裾分けしてもらうことにした。バナナを焼いてナゲット風にしているやつが美味しい。縁がなくてほとんど食べたことがなかったけれど、ベジタリアン、探究してみたらハマるかもしれない……と思った。

 

 今日は疲れたし、何より気が抜けたので早めに寝る。おやすみなさい。

続・カミーノ 風が強く吹いていた

十一月七日(月)

 続・カミーノ巡礼四日目。朝からお腹が痛くてやる気が出ない。どうしようもないので一時間ぐらいかけてゆっくり準備した。今日は二十キロ歩く。冷静になってよく考えてみるとまあまあな距離だけど、いまさら焦りはしない。

 

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 昨日メニューピルグリムを食べた店で朝ごはんを食べた。オレンジジュースとコーヒー、トーストのセットが五ユーロ。黄金比を感じる組み合わせだ。バターとジャムをたくさん持ってきてくれるのも嬉しかった。

 

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 まだ眠そうな様子のうさたろが愛おしい。この子は子供だから、いつもだいたい十時ぐらいまで寝てるんだ。

 

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 八時半、出発。おそらくまた私たちが最後尾だ。起きたときはただ曇ってるだけだったのに、いざ外に出ると雨が降り始めていた。とはいえそんなに激しくないが、風が強いために威力が増している。まあ、ここ最近はずっと晴れが続いていたから、たまに悪天候だと雰囲気が違ってけっこう楽しいさ。強がりとかではなく。

 

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 古い水路の横を歩いて通った。こういう剥き出しの橋って渡るときワクワクするな。

 

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 切り出された山の上を行く。

 

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 さっきまですごい勢いで雨が吹き付けてきていたのに、三十分ぐらいしたら急に晴れてきた。ガリシアの天気は変わりやすい。また降るかもしれないけど、とりあえず一安心だ。

 

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 十時。まだたいした距離は進んでいなかったが、この先十三キロ以上何もない山道が続くようなのでちょっとバルで休憩することにした。美しい白い猫がお出迎えしてくれてハッピー。飲み物を頼んでいる隙にちょっと遊んだらジーパンに肉球のかたちの跡がついてうれしかった。道路が濡れてるからね。

 

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 三十分ぐらい休んでから再出発。体調は相変わらずだが猫のおかげで少し元気が出た。

 

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 しばらくすると分岐路にぶつかった。左へ行けばフィステーラ、右へ行くとムシアという別の町に辿り着く。実はこのムシアを経由してからフィステーラに向かうコースもあるのだが、私たちは今回そこのところを計画に入れていなかったので予定通り左へ折れることにした。

 

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 すごい空だ。最近にしては珍しい力強さを感じる。

 

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 しかし行く手の方はけっこう曇っている。そのうちまた降り出しそうだ。このパターン、けっこうあるな。

 

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 雨に打たれてすっかり古ぼけてしまった聖母マリアとキリストの像。森の奥にぽつんとこれが建っているのを見て、表現し難い感情になった。

 

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 道は緩やかなアップダウンが続く。バルに入るまではきつい登り坂も多々あったが、それ以降はけっこう歩いていて楽だった。

 

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 予想通り再び天気が荒れ始めた。強風で木が倒れてこないか心配なぐらい。ぽつりぽつりと雨も降ってきたのでカッパを着た。

 

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 気のせいか、遠くに海のようなものが見えてきた。フィステーラまでもう残り二十キロもない。旅の終わりが近づいているのを感じる。

 この辺りから町に向かって急な下り坂が始まったので、滑って転ばないよう気をつけながら前に進んだ。

 

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 港だ。数ヶ月ぶりに見るねえ、今年はたくさん行ったよね、海、と二人で言い合った。

 

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 十三時四十分。今日泊まる町・セーに到着。本当はもうひとつ先の町まで行く予定だったのだが、高い宿しか空いていないようなよでここに留まることにした。ここもなかなか大きな観光都市のようだ。

 

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△キッチンのホワイトボード一面にゲストの落書きがしてある

 

 時期の関係なのかけっこうクローズしている宿が多く、三件回ってようやくチェックインできた。たぶん、もう少し巡礼を始めるのが遅かったらけっこう危なかったと思う。どこにも泊まれずに途方に暮れる日とかあったんじなないだろうか。

 ちなみにだが、冬に巡礼する人はそこも見越してテントを持って行ったりするらしい。上級者だね。

 

 この宿のオスピタレロはみんなのお母さん的な人柄の方で、シャワーを浴びる前にベッドでゴロゴロしていたら「あんたたち早く入っちゃいなさいよ!」と怒られたのが嬉しかった。

 

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 夕飯はピザ。私たちが最初に目星をつけていた店は現在閉まっているらしく、宿を出るときにオスピタレロがそう教えてくれた。それで代わりにおすすめしてもらったところで食べることにしたのだが、これがまあ美味しい!人気店なのか中は地元の若者で賑わっていた。雰囲気もおしゃれだもんな。

 

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 お腹いっぱいになったあとは海辺をお散歩。


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 風が強く吹いていた。


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 明日にはフィステーラの岬に着く。スペインにいられる時間ももう残り少ない。いまではすっかり見慣れてしまったこの変な街路樹ともそろそろお別れだな、と思うと急にさみしかった。でも、このさみしさも含めて旅なんだと思う。