2018-01-01から1年間の記事一覧

あかるい帰り路

やがて死ぬこの身でしばし待ちぼうけ三番ホームかじかむ時計 すれ違う人影に怯え食べかけのおにぎり隠す品行悪し 充電が切れていよいよ軽い鞄お願い刺してよいない通り魔 デートより楽しいことをするために今から嫌いになっとこ二月 棺桶に横たわるとき流れ…

誰にも伝わらない話

ㅤ人を好きになるのって、簡単すぎて逆に難しい。世の中よい人間が多すぎる。優しかったり親切だったり。偽善、というのだってなかなか侮れない。例えその動機が不純なものでしかなかったのだとしても、実際に起こした行動によって相手が助かるのであればそ…

ㅤ職場に三島由紀夫っぽい男の子がいる。何と言ったらよいか、佇まいに異様な品があるのだ。目つきが鋭く顔立ちが精悍で、姿勢がいい。何と言っても美男子。全体的に"三島由紀夫の小説に登場してきそう感"がすごいし、なんなら三島由紀夫本人にもわりと似て…

第61回短歌研究新人賞応募作『光明』

第61回短歌研究新人賞応募作 ☆予選通過、2首掲載でした(※が掲載歌) 『光明』 凍らせた百合の花々摘み取って天上のひとミンチ機遊び いつもより酸素が多い朝だからついつい手伸ばす刃物特集 しろいろの侵略戦争受け入れてわたしの眼下もすっかり永遠 敷布団…

第60回短歌研究新人賞応募作『たいくつな水』

☆予選通過、2首掲載でした(※が掲載歌) 『たいくつな水』 わたしから溢るるもので浴槽は羊水として満たされている 名前さえ忘れてしまいそうになるからっぽのままほどかれてたい ふくらんだ腿の産毛は水をはね死体となってしろくゆらめく 肥大するすべてが…

23歳の夏休み

1年半近く続けた仕事を辞め、地元を出ることにした。特に何かきっかけがあってそうしたわけではない。ただ、そういう時期が来たのだ、という感じがする。親元を離れ、自分の力で生計を立てることは、兼ねてから抱いていた目標のひとつだった。達成するまでに…

POP

I 昔から占いが好きだった。特に星占いが。理由はいくつかある。不思議なことに魅力を感じるから、遠い宇宙のことを連想させられるのが楽しいから、運命のようなものの存在を信じてみたいから、未来のことを知っておきたいから、ロマンティックですてきだか…