2019-01-01から1年間の記事一覧

2019短歌

詠んだ順に56首 1.満員の電車つり革につかまって案外大きい彼女のつむじ 過ちを犯してからも生きてけよ念込め見やる変身ベルト 3.死ねるほどの夜があっても吐きはせずかわいい寝癖に綿毛かさねる 4.吊るされたシェード・ランプよ落ちてこい不眠で滑るマカロ…

命のような

命ですと言えないままにジニア枯れ 剥き出しの鉄が線路に滑り込む すし詰めの電車で鮭になりたいな 隣人の開いた本にカレーの絵 IPHONEの光じゃ世界救えない 着ぶくれて嘘の昭和を思い出す ポケットに手を差し込めばなぜ桜 同僚に芋をもらって戦後ぶる…

夢見る魚

ようやく鮭に生まれ変わったと思ったら ここはまあるい缶の中 フレークなのでした 身を切られ 三枚にも 四枚に卸されて 色が変わるまで茹でられたあと 丁寧にその肉をほじくられ いくつもの いくつもの欠片に ばらさてしまったわたしたちは 塩気がきいていて…

みどりの亡骸

鶏小屋のみどりの扉をひらくと まだ幼い妹の死体が 血も流さずに横たわっていたので わたしは 白すぎる太陽を背に 草むらの上へしゃがみこみ 二回だけ まばたきをしてみた 冷たくなってしまった妹は あいかわらずやわらかなままで 動物たちの鳴き声を聞いて…

他人の死

大切なひとが 何人か死んだ 街路樹の濃すぎる青を 蛇口から流れる水の不透明さを 旅客船設計図の精確さを 百合のように垂れ下がった老人の頭を わたしと同じ目線に立って わたしと同じだけの重さを持って そういうものを大切にしていたひとが この世から消え…

朝に遊ぶ

最寄駅のホームで電車が来るのを待っている最中、ふと、私にとって私の身体はオモチャだな、という気がした。目で見たこと、耳で聞いたこと、肌で感じたこと、その他すべての刺激を甘受し、解釈するために在る総合器官。血の通った肉体というよりも、剥き出…

鬼とひよこ豆

わたしの上司を ひとは 鬼と呼ぶ 本人の前では言わない かくれてこっそり そう呼ぶ わたしも あのひとに仕事を教えてもらったの それぞれにいいやり方があるってね ちょっとこわいけど 尊敬しているの そんなことをいいながら みんなどこかに隠れてしまう 怒…

みんな知っている

欲しいものを全部買った 魔よけのための鏡 知らないひとの夢日記 レースで編まれたコースター 丸ボタンがついている あずき色の冬物コート あの子にあげるリボンの髪飾り 財布がとても軽くなった おさつも小銭もどこかに消えた やつらはすばしっこくて 逃げ…

最近、馬になりてえな、と思うことが増えた。急に。 理由は単純で、かっこいいからだ。たくましくてしなやかな肉体に魅力を感じる。お尻から太ももにかけてのラインなんか、特に最高だ。四角い足首と、かたそうな蹄もいい。強い生き物だったらなんでも好きだ…

煙のおもいで

私にはおじいちゃんが二人いる。父方のおじいちゃんと母方のおじいちゃん。別の言い方をすれば、好きなおじいちゃんと嫌いなおじいちゃんだ。今日は嫌いなほうのおじいちゃんの話をする。 おじいちゃんはたいそう亭主関白な、ザ・昭和の男で、沸かした風呂に…

儀式(かわいい)

今日は仕事が休みだったので、ひさしぶりに一人でのんびり過ごした。最近は休日の度に誰かと会っていたから、なんだかちょっと間が抜けたような、変な気分だ。さみしいようなさみしくないような、退屈なような退屈ではないような。 でもまあ、けっこう大がか…

逆ギレ美容室

もうなんでもいいです。誰が私のこと好きでもいいです。誰が私のこと嫌いでもいいです。何を見て私のことを好きになっても、何を考えて私のことを軽蔑しても、ぜんぜん、どうでもいいです。私に対して誰かが何かを思おうと、それはその人の勝手だし、特に止…

恋がわからない

一カ月前にできた彼氏と別れることになった。全然好きじゃなかったはずなのにさみしいと感じてしまうことがふしぎだ。でも、だからといってひきずったり泣いたりすることはなさそう。やっぱり、胸のつかえがとれてほっとした、という気持ちのほうが大きい。…

不燃物

僕もそれをやりたかったのだ。そうだそうだ、そうだよな、燃やされたくないよな、とそのときは思ってううとかやってたけど、本当は僕がそれをやりたかったのに、先を越されて、僕まで続いてそれをやったらバカみたいだし、バカと思われたくないし、これで僕…

所有

好きな子のLINEのアイコンが、これどう考えてもデート中に撮ったやつだろ、みたいな感じをにおわせている写真に変わっていて、朝から衝撃を受けた。並んで映っているいちご味とマンゴー味のかき氷があまりにもおいしそうでかわいらしくて、私はもう、いっそ…

服とテンション

年々、テンションの高い服を着れなくなってきている。 私はもともと少女趣味的な傾向の強い人間で、フリルやレースのついた洋服を好んで着ることが多かったのだが、最近、それがちょっと無理になってきた。顔が老けてきたことや、体型がゆるんできたこともあ…

みんな限界

仕事行きたくなさすぎて限界だからちょっとでも自分の気持ちアゲるためにデート服で出勤しちゃお、と思って朝の5時ぐらいから一生懸命メイクしてたんだけど、家出る10分前になって「え、今日休みじゃん」って気付いた。偶然。びっくりしたー。今日は夕方から…

おとむらい

SPANK HAPPYの『普通の恋』をひさびさに聴いている。10代の頃に出会って以来何百回とリピートしてきた名曲だが、やはり、いつ耳にしてみても心地いい。甘いのに酔ってはいなくて、でもちょっとだけ眠たい、みたいな雰囲気の音楽と、そこへ乗っけられた、懺悔…

perfect

ちょっと前、友だちから「パフェの語源ってperfectからきているらしいよ」という話を聞いた。 そう言われてみれば確かに、こんなに何もかもが詰め込まれていて完璧な食べ物は他にないような気がする。てっぺんから順に、さくらんぼ、小さなクッキー、アイス…

パフェ喰いねェ!

丸々二日間お休みだったのに、いまいち体調が優れず、なんか外も雨だし、結局ぐーぐーと寝て過ごしてしまった。本当はおしゃれをして出かけて、大きなパフェを食べたり、100均でキラキラのラメペンを購入したりしたかったのだが、いたしかたあるまい。長い人…

大人じゃないもん24

若い女の子を紹介されたので、軽い気持ちで「私と同い年ぐらいですかね」と言ってみたら、苦笑気味に「いやいや、全然違うよ、あの子20歳になったばっかだよ」って返されて、エッ、アッ、エッ、そうか、そうなのか、私もうそっち側じゃないのか、ってめちゃ…

生クリーム衰退

彼氏にふられるかも、というか、彼氏そもそも私のこと好きじゃなくない?めんどくさいとか思ってない?って考えだしたら簡単にメンタル終わった。生理前で全身浮腫んでて通常時より2キロも体重増えてるけど構わず味噌ラーメン食べちゃえ。ケーキもいっちゃえ…

労働賛歌

転職してから三日が経った。正直言って、まだ右も左もわからないような状態だ。一応経験のある職種ではあるものの、だからといって安心はできない。基本的な業務内容は同じであっても、求められる技能や流通しているルールは微妙に違うからだ。どこに何が置…

きみはかわいくないね

月曜日ですね。 塩分の摂り過ぎで浮腫みが酷く、鏡に映った自分の顔があまりにもかわいくなかったので発狂した。いくらなんでもこれはない。 十代の頃は散々悩んだものの、美醜の問題については一応自分の中で決着がついており、近頃はあまり気にならないよ…

日曜礼拝

近くにプロテスタントの教会があったから、試しに行ってみることにした。以前からキリスト教には関心があったし、教養のためにその概要を知っておきたいとも考えていたから、遅かれ早かれいずれは足を運ぶことになっていたと思う。それがなぜ今であり、今日…

一度でも我に頭を下げさせし人みな死ねといのりてしこと

「性格を矯正していく必要がある」という言葉が頭の中をグルグルしている。 なんかまあ、あのパワハラ親爺はさすがに頭がおかしかったというか、怒っていないときですらちょっと常軌を逸しているような節があったから、関わってしまったのが運の尽きだと割り…

ポップコーンシュリンプのあなた

サイゼリヤといえば、こんな思い出がある。 数年前に一瞬だけ付き合っていたというか、付き合っているっぽい関係だった男子大学生と、デートで映画を観に行った帰りのこと。 「夕飯何食べる?」って流れになった途端、それまで控え目だった彼がいきなり強気…

生きてるナウ

「生き死にの問題」なんて聞くと重苦しく感じるかもしれないが、こっちから言わせてもらえば、今こうしてサイゼでダラダラミラノ風ドリア突っついてるこの超どうでもいい隙間時間だって別にじゅうぶん「生きてるナウ」じゃん?っていうか、ゾンビでもない限…

意味不明の恋

大学生のときにすごく好きだった、闇市で闇米をこぼしていそうな外見の、あまり生きていくことが得意ではなさそうな、生乾きの草履の裏みたいなにおいのする先輩が、「詩」というものを小馬鹿にしようとして、「あれだろ、私は春の光とか、野に咲くたんぽぽ…

生命力

4年ぐらいの付き合いになるカウンセラーとひさしぶりに会ってきた。信頼している人物に話を聞いてもらったことでようやく目の焦点が合ったというか、頭の中で渦巻いていた様々な考えがはっきり輪郭を得たような気がする。 「さかなさんは生命力が強いから大…