2019-12-01から1ヶ月間の記事一覧

2019短歌

詠んだ順に56首 1.満員の電車つり革につかまって案外大きい彼女のつむじ 過ちを犯してからも生きてけよ念込め見やる変身ベルト 3.死ねるほどの夜があっても吐きはせずかわいい寝癖に綿毛かさねる 4.吊るされたシェード・ランプよ落ちてこい不眠で滑るマカロ…

命のような

命ですと言えないままにジニア枯れ 剥き出しの鉄が線路に滑り込む すし詰めの電車で鮭になりたいな 隣人の開いた本にカレーの絵 IPHONEの光じゃ世界救えない 着ぶくれて嘘の昭和を思い出す ポケットに手を差し込めばなぜ桜 同僚に芋をもらって戦後ぶる…

夢見る魚

ようやく鮭に生まれ変わったと思ったら ここはまあるい缶の中 フレークなのでした 身を切られ 三枚にも 四枚に卸されて 色が変わるまで茹でられたあと 丁寧にその肉をほじくられ いくつもの いくつもの欠片に ばらさてしまったわたしたちは 塩気がきいていて…

みどりの亡骸

鶏小屋のみどりの扉をひらくと まだ幼い妹の死体が 血も流さずに横たわっていたので わたしは 白すぎる太陽を背に 草むらの上へしゃがみこみ 二回だけ まばたきをしてみた 冷たくなってしまった妹は あいかわらずやわらかなままで 動物たちの鳴き声を聞いて…