2022-06-03から1日間の記事一覧

ケーキ屋さんにGO

欲しいものがいくつかあった 世間はピカピカしていた 飼い主をひっぱる子犬 はだかになった柘榴の木 蜂蜜酒をかけられて 酔っ払ってるバニラアイス バーカウンターの向こう側は 五右衛門風呂の話で 賑わっているようだ ここにいると 心が ドラム式洗濯機にな…

生きることに栞をくれる喫茶店 で あなたがしたことを考えていました 白百合の花粉で手を汚すのは もうこれきりにしたかったの ずいぶん若いんだね あの青年実業家 あの家の猫 あの子 そういって ゆっくり瞬きをしたかった 春 世界地図をひらいて すべてのと…

宇宙の瘤

魂の 整形手術を受けました たとえば 真夜中のバス停で 殺しのアナウンスを聞いているとき 世界はトレーシングペーパーによって 無限に転写され続けている あなたと私 から 私はあなた に移行した王国で 土砂降りの音のスコール ゆっくりくぐり抜け 何度もこ…

やさしい類義語辞典

丸いピンクのマグカップに 淹れたての珈琲を注ぐ あるいは チーズケーキを十六等分にしてみる いまこのフロアにいる人数分 作りすぎちゃった肉じゃがは いつだって近所におすそわけだし エプロンのポケットは 転んでしまった子に渡す ミックスフルーツ寒天で…

float

神様がいない世界って 親がいない金曜日の夜みたいだね あなたと過ごす週末は 時々 大きな声で笑いすぎる 花瓶を倒して気まずくなるよりは ずっといいかんじだけど でもね BIGサイズのポテトチップスと ストローをふたつ刺したコカ・コーラ 脂肪まみれのピン…

鈴虫

虫のいのちを 一途にやっている あたらしい 薄緑色の石鹸を 粉付きの紙包から取り出すとき カサカサと 微かな音がした それを 耳の奥に閉じ込めたまま あなたがいる寝室へと向かう まあるく窪んだ足の裏が ふたつ 笑いかけているようだったので 壊さないよう…

破損

透明な葡萄皿を泡立てながら おい おまえはいつ割れるつもり? と問いかけてみる 水の温度が下がったので それを返事と仮定して カステラのあまいにおいが充満する 食器棚に そっと 寝かせてやると ひとすじの光るしずくを流して おまえは死ぬのが怖いんだと…