あこがれ

最終公演

退去数日前の夜、死ぬほど汚い部屋でピザを食べた。近景にダンボールの山、バックパックに入り切らなかった荷物の残骸。次引っ越す時に買い替えるつもりで冷蔵庫を手放してしまったので、仕方なくスーパーで氷を買った。すぐ溶けるくせに一キロ分もあるので…

トラベルクリニック(旅支度の断片集)

旅の才能 そもそもの話、私はまったくと言っていいほど英語が話せない。幼稚園児でも知っているレベルの単語しか知らないし、語順が日本語と違うのもなんとなく覚えているだけで詳しいことは全部忘れた。中学校に入ってはじめての定期試験で挫折感を覚えて以…

結婚しました

六月六日。今日はバームクーヘンの日だそうです。なんかかわいいですよね。そんなキュートな日に二人で区役所へ出向いて、婚姻届を提出してきました。恋人だった彼と、今日から法律上の夫婦になります。同じ家に住みはじめてからもうけっこう経ちますし、こ…

Intaglio

今日から二十七歳になった。毎年誕生日を一つの区切りとして、その年の振り返り&今後の展望をブログに書いているので、今年もそれに倣おうと思う。 正直言うと年を取ることにだいぶ飽きてきていて、もうあまり自分の誕生日に対して感じることがない(今回は…

今日は私がいないから

恋人と大喧嘩した。夜、転職について相談していて(またするのか…)、なんとなく相手の物言いが突っつけどんというか、頭ごなしにいろいろ決めつけて私の選択や考えを否定しているように感じたので、ついカチンときていたら逆に怒らせてしまった。「俺は間違…

動く記憶の水槽

二年ぶりの帰省だった。同じ県出身の恋人と途中の駅でさよならをした後、それまでもあった焦燥感のようなものが一気にその存在を色濃くしたように感じた。電車は動く記憶の水槽へと変わり、二年前、五年前、それよりずっと以前の私が次々体の上に降ってくる…

再解釈の海

一度通り過ぎてしまった瞬間は永遠に戻ってこない。おばあちゃんに酷いことをいわれて俯いている時間、画用紙いっぱいに書いたフルーツと甘いもの、セーラームーンのプリントがしてある靴、ふつうって何?と先生に聞いた同級生、職員室の扉の前に立つときの…

PIKAPIKA

先月末に誕生日を迎え、二十六歳になった。正直、あまり実感が湧かない。去年は「いよいよ私もアラサーになったのか」という、何ともいえない感慨があったが、今回はそういったわかりやすい区切りの歳でもないし、年齢がひとつ上がったからといって急に顔が…

スニーカー・コンプレックス

スニーカー買ったよ 今年の春はいつもと違う装いがしたいと思って、試しにスニーカーを買ってみた。真っ白な本体と、ミントカラーの厚い靴底が他ではなかなか見かけないかわいらしさだ。自分は靴に関してはまったく無知な人間だが、どうやら有名なブランドの…

今日は彼氏がいないから

訳あって恋人が四日間家を空けることになった。こんなことは滅多にない。最初に話を聞いたときはいやだいやだとたいそう駄々をこねたが、なんせ事情が事情だったし、私はもう大人なんだから我慢しよう……、と考えて最終的には受け入れることにした。 それから…

空白期間・後編

この記事の続きになります。 二月四日(木) 七時半頃目が覚めた。本当はもっと早く起きるつもりだったが、昨夜眠りについたのが遅かったのもあり、一度目の起床では意識が覚醒せずついつい二度寝。再度起きてからもなんとなく怠くてしばらくベッドの上でダ…

空白期間・前編

兼ねてから希望していた通り、今年の一月末を目処に退職する運びとなった。たった一年半程の短い期間ではあったが、本当に色んなことがあったように思う。業務上のことでパートさんに注意したら「私にばっかり言わないで!」と逆ギレされ、その後数週間口を…

肉体の才能

痩せたいというよりは、みんなと同じ体型になりたいのだと思う。 お腹や腿についた贅肉を嫌うのと同じ温度で、はやくこの胸が小さくなりますようにと祈らずにはいられない。とにかく、私は自分の体にある特徴的な箇所が嫌でたまらないのだ。健康体重の範囲で…

ナチュラル・ウーマン

こんな時ではあるが、つい先日、二十五歳の誕生日を迎えた。不思議ちゃんと呼ばれ続けたこの私もとうとうアラサーである。早く死ぬ、早く死ぬと思いながら生きてきたので、正直、こんな歳になるまで自分が存命しているとは想像していなかった。行き当たりば…

熱海

今年は国内旅行をたくさんしたいな、と思い、その第一弾として熱海へ行ってみることにした。 有名な温泉地の中ではわりあい、東京から近い距離にあるし、日帰りでなら何度か行ったことがあったので、旅行初心者の私にはちょうどいいと思ったのだ。 昨年の夏…

日曜礼拝

近くにプロテスタントの教会があったから、試しに行ってみることにした。以前からキリスト教には関心があったし、教養のためにその概要を知っておきたいとも考えていたから、遅かれ早かれいずれは足を運ぶことになっていたと思う。それがなぜ今であり、今日…

7kg

半年間で体重が7kg増えた。原因はストレス。なんて書くと甘えだと思われるかもしれないが、自分自身の感覚に従って言えばそれは真実だ。精神状態が不安定なとき、私は食欲をコントロールすることができなくなる。これはわりと昔からそうで、子供のころなどは…

さみしいふしぎ

上京してから一週間が経った。 親戚宅に居候という形ではあったが、一応、大学時代も東京に住んではいたため、さほど戸惑うような場面はない。 管理人付きの寮生活などではなく、本格的な一人暮らしというのははじめてのため、わからないこともそれなりにあ…

春は夜だろ

よほど遠い過去のこと、秋から冬にかけての短い期間を、私は、変な家庭の一員としてすごした。そしてそのあいだに私はひとつの恋をしたようである。 (第七官界彷徨/尾崎翠) Ⅰ.仕事辞めた 辞めたというよりは、辞めざるを得なかった。元は三ヶ月契約の短…

誰にも伝わらない話

ㅤ人を好きになるのって、簡単すぎて逆に難しい。世の中よい人間が多すぎる。優しかったり親切だったり。偽善、というのだってなかなか侮れない。例えその動機が不純なものでしかなかったのだとしても、実際に起こした行動によって相手が助かるのであればそ…

ㅤ職場に三島由紀夫っぽい男の子がいる。何と言ったらよいか、佇まいに異様な品があるのだ。目つきが鋭く顔立ちが精悍で、姿勢がいい。何と言っても美男子。全体的に"三島由紀夫の小説に登場してきそう感"がすごいし、なんなら三島由紀夫本人にもわりと似て…

23歳の夏休み

1年半近く続けた仕事を辞め、地元を出ることにした。特に何かきっかけがあってそうしたわけではない。ただ、そういう時期が来たのだ、という感じがする。親元を離れ、自分の力で生計を立てることは、兼ねてから抱いていた目標のひとつだった。達成するまでに…

POP

I 昔から占いが好きだった。特に星占いが。理由はいくつかある。不思議なことに魅力を感じるから、遠い宇宙のことを連想させられるのが楽しいから、運命のようなものの存在を信じてみたいから、未来のことを知っておきたいから、ロマンティックですてきだか…

洗練、収束、安定

年の瀬も押し迫ってきたことだし、今年のまとめと、来年の展望のようなものを記しておきたい。読めばわかるけど、タイトルは2018年のテーマです。 ☆ 年々、新しいものに対する希求力のようなものが落ちていっているように思う。おそらくは老いなのだろう。し…

永遠

なんだかんだで付き合うことになった。いろいろ誤解があったと知り、勝手な思い込みによって傷ついてしまっていたことを深く反省。一を聞いて十考える癖、いい加減やめなくては。 ☆ 友だちといっしょに撮った写真を見返していると、なんでカメラというものが…

刺されそう

十二月がトラウマになりそうです。のっけから大好きなひとにふられ、全力で自暴自棄になりつつもどうにか持ち直し、ようやくまともにごはんが食べられるようになって、夜も眠れるようになって、新しいひととの出会いもあり、このまま順調にいくのかな、と思…

限りなく赤に近いピンク

夏に買ったきり、ずっと使わずにとっておいたJILLSTUARTのリップブロッサム50番を、はじめて自分に塗ってあげた。限りなく赤に近いけど、でもぎりぎりのところでピンク、といった感じの色合いがとてもかわいらしく、見ているだけで胸がときめく。グリッター…

被服という詩、着ることで脱いでゆく

おしゃれなひとになりたいです。というか、全身が詩みたいなことになっているひとになりたい。つい手にとってしまう色、なんとなく惹かれる方角、国、味の好み、心地いいと感じる手触り。服装を通じて、そういうものが全部表にでてしまっているひとに対し、…

あたらしい朝

上海へ行きました。噂に聞いていた通り、夜景がとっても綺麗だった。同行者が運転する車の後部座席から、右へ左へと広がる輝きを眺めていると、自分の身体が芯を失って、空気と同化していくような気がしました。自身の処理能力をはるかに超えるうつくしさと…

胃と熱

怒りをこらえているときの感覚と、空腹を我慢しているときの感覚はよく似ている。仕事中に発狂したくなった場合を考えて、私はあえて食事を抜くことにした。内側から湧き上がってくる衝動を抑えつけるためには、体の中心に強く力をいれなくてはならない。そ…