2017.04 短歌

詠んだ順に31首

1.好きな花、薔薇とすみれと、好きな色、赤白ピンク、好きな犯罪

2.人類がざらめのようにはりついて地球をなめる神さまの舌

3.子供向けとんかつソースおごられてわたしのひみつ39円

4.こんなにも氾濫してるはずなのにだれも知らないあなたのひかり

5.空き缶を並べて倒しまた並べ桜はふれよわたしのために

6.借りてきたおっさんつかまえUFOを呼び出す儀式 蟻がうろつく

7.おっさんの言うこと全部ふいにして超かわいくねえ二の腕つねる

8.1時間1000円ほどで量り売りおっさんのいのちどうでもいい愛

9.部品ならどこにでもあるはずなのに浴槽の滓きみの塊

10.こんなにもお腹が痛い金曜は水溶性のくじらになるわ

11.しっかりと埋めておいたつもりでもときおり芽吹く指とにんじんと

12.教えてよきみがいわれた酷いこと、千代子ちゃんとのキスの味

13.勘違いしてるの自覚してほしいハルキストなのは元カノのほう

14.豹柄の似合う女になりたくてビーカーの底じっとみつめる

15.かわいそう、かわいそうってなに殺すぞマーマレードとフライパンでさ

16.いちごジャム踏みしめながら歩いてくフランスパン似のむくんだ足と

17.あの娘からもらった贅肉5kgぶんあなたのことがだいきらいだよ

18.りかちゃんの告白尻目に彼方では冥王星が爆発している

19.かわいいねきみはというよりぼくたちはうさぎの舌に刺繍する薔薇

20.半熟のたまご熟れゆく夕暮れに食べてみたいのは鰐のぎざぎざ

21.どこまでも私のあとをついてくる、たまに追いこす、おばけのワルツ

22.ダイヤルに押しやる指がゆれている穴の奥にいるネズミの心臓

23.なんとなくまるめたはずの便箋がかもめになって海を飛んでく

24.やわらかな綿毛は春をまもってるバターみたいな四月のひかり

25.食べられるなにかを探しにおれがゆくたんぽぽ愛でる蟻と見つめあい

26.襟首のゆがみを正してくれるのは決まってやな子 まつげにみとれる

27.産まれたての火星みたいな朝だから食材たちもかたちをなくして

28.とくべつなわるいこにすらなれなくて きみにみられたい ピーマン嫌い

29.野菜しか口にいれないりかちゃんの隣でわたしは抹茶プリンを

30.退屈な青がひろがる 窓ガラス割れたらいいのに花瓶でも可

31.新しい下敷きひかる五限目にハロー・キティはつるりとしてる