火星を殺しに

バニラとかメロンソーダの味がする煙草ばっかを咥えて腐る

太宰より中也がいいな作品のことではなくて付き合うのなら

カラオケではじめていれたヒット曲不倫の話をずっとしてたの

好きなだけ我儘を言う好きなだけきみは無視してたまに従え

なんだって食べてあげるよピーマンもだから私を傍に置きなよ

ちゃんとしたおんなじゃないからパフェ皿に灰を落とすがきれいな睫毛

プチトマト突き刺すときにきみ思う十四歳の私にさせて

かまきりが腸(はらわた)こぼして眠ってる真昼の夢に暑さも忘れ

途中下車あなたを置いて海へ行くひとりぼっちのあなたが好きよ

肉体の才能だけで生きているグラビア雑誌の表紙が笑う

欲望の大きなひとになれるかな衝動買いの達磨を抱いて

古い歌ばかりがほんとに聴こえるよ嘘の昭和をずっと生きてる

金曜の朝から浴びる潮風に洗い流され他人の唾液

ずっと行く先のほうまで行ってみる太陽沿いを知らない犬と

失ってからよりずっと得る前の私のほうがさみしかったね

ベビーカー越しに感じる眩しさがあんなにいやで泣いてたはずが

異国にも茶色の目した猫がいてきっとそいつも破壊が趣味だ

汗かいたグラスが音を立てるたび抽象化した私が溶ける

ゴッホの絵みたいに貧しい私たち空港で食うマックのポテト

かき氷食べたいなって話してもブルーハワイが好きだと言えず

手一杯だから受け入れられないがフルーツ大福たくさんあげる

魂の正しい置き場所探してる琺瑯鍋を開けては閉めて

いにしえのインターネットに書き込んだ鬱だ氏のうがまだ残ってる

いつの夏かわからないけど夏の香だあの時嗅いだ石鹸のやつ

ウィンクが上手だねって言われるの星が出るまで瞬きするよ

似合うって思うから着たメイド服ひまわり畑の花粉で汚す

元彼の結婚呪う歌きいてあまい南瓜を潰す幸福

あなたさえいればいいのと思ってたあなたが消えた後の交際

体には気をつけてって言う癖にどうしてそんな鋭い目する

ぬるい水床にこぼしてさようなら七日間だけ入籍しよう

合法のロリータになるまたは犬 高すぎる音きらいなままで

改行のつもりで押したenterが推敲前の熱を送信

バスタブに押し込められて不安がるあなたの耳をやさしく撫でる

同じやつくださいなって言いながら頭上かかげる輪っかの電球

こつこつと石の魂叩かれてうれしいよって破片が飛び散る

この街の暮が見たくて傾けた身体を預かるブルーの輪郭

同室のぬいぐるみたちやさしくて受動喫煙異議を唱えず

神様のまなざしみたいな月明かり爪の間の血さえもひかる

ぐちゃぐちゃに食べ残されたコンビニのケーキを平気で引き受ける愛

うさぎ年生まれにだってなってやる貯金残高で買える全てを

帰還する火星と共にやってきたビデオデッキがうちらの子供

お湯沸かしバニラの夜は溶けていく薄い瞼に蟻の幻影

花の名を思い出せずに笑ってるこのまま家ごと捨てちゃおうよ

履歴書に書けるぐらいのでかい夢熱海に住んで毎日焼肉

気に入ってくれてほんとにありがとうきみのにんじん全部星型

ボーナスが入った後の話する仕事終わりに百合を持ちたい

散歩道好きなアイドルソングかけ純情ロードと呼んでみようか

サルビアが燃えているからまあいいかちいさな嘘は聞こえないふり

あの夜を越えてきたから生きられるパスタの適量わからなくても