2020短歌

詠んだ順に49首

  1. 永いことうつくしかった髪に陽が射してどこまで白い朝かな

  2. 海を背にエビピラフ食う老夫婦ありふれたもの・よくある土曜

  3. 急死した友が推してたアイドルが生誕迎えアラサーになる

  4. 薔薇の名を教えてくれとせがむ子に太陽落ちてすべてが終わる

  5. あたたかい手に包まれて春の夢最近かなり人が死んでる

  6. 金魚鉢指ではじくと音がする透明ですと言ってるような

  7. 貝殻を開くと真珠があるように手術室にて見つけて心臓

  8. 独特な定義の春だあおいやつレジャーシートで魚屋開く

  9. 壊れてる箪笥も実は願ってる壊れる前のぼくに戻せよ

  10. なんどでも打たれてやるよクッキーが増えるポッケを持たない僕だが

  11. 踊りながらスーパーに行くだけのきみ素面で見てもきっと眩しい

  12. 後の世に天使と呼ばれる彼女だが牛乳パックを逆から開ける

  13. ハンカチの柄さえひとりで決めなくちゃいけないなんてどうして言うの

  14. 本を読む女がふいに顔あげてすみれ革命報せてくれる

  15. 明瞭に失敗してる手作りのミルクレープに重ねるからだ

  16. 旅行用鞄が欲しい がらくたや切れた電球拾えるように

  17. 蟻噛んでレモン味だとほざくやつむかしは毎年出会えたのにな

  18. はつ恋のきみに重ねるオーガンジー水色なのは寝取られたから

  19. 買い出しのメモに卵を書き加えレモンタルトの秀才になる

  20. 夕焼けをうつすあなたの瞳孔がこわいとおもう皮膚科の帰り

  21. あのひとの心以外は屑だって知ってはいるがぼくを愛せよ

  22. 神ごめん午前三時にぬるい麦酒のむけど正気失えぬまま

  23. 七歳のときに愛した男性がアップロードする女装の過程

  24. 海のことでかい水って呼ぶきみがぼくの骨見て泣いてくれんの

  25. 朝ごめん眉毛もなくて食べかけの野菜炒めがダメになってく

  26. 刺すように夏の終わりが痛くっていちごサワーで青痣冷やす

  27. 一夜にて死ぬためだけに生まれたい固く握った金魚の心臓

  28. 不審火のニュース拾い読む夕暮れに輪廻の生をちょっと信じる

  29. 恋のことわからないけど歯ブラシはピンクにしとく間違えないよう

  30. 火を見てる 揺らぎの中で生きていくあたたかくしてと祈る掌

  31. 珈琲にミルクと砂糖はつけますか? 足の間で笑う恋人

  32. その道を曲ってみたら会えるからオレンジの血をここで渡して

  33. 聖典の中に私たちきっといて上手に床へ落とすパン屑

  34. 傷ついたままでいいから笑ってて曇り硝子の花柄みたいに

  35. ロマンスがあなたの上に落ちてきて冬の朝日に青色混ぜる

  36. オランジェット食べたい気分待っている日記に記す静かな愛欲

  37. 朝の月見上げて母を思い出す私の愛は欠けてる茶碗

  38. 夜の水 触れた鏡の手応えをふしぎに思う無垢な十月

  39. 丸窓の家にあなたと暮らしたい果物ナイフ握るさみしさ

  40. 白鳥の胎内で午後隠れんぼ川の水面に砕けた琥珀

41.祈りの手缶コーヒーに縋りつく詳細知らぬ神社に居座る

  1. 幽霊と見つめ合ってる喫茶室 金属製のフォークを持つ手

  2. 耳鳴りが昼寝の後に聞こえたらバナナタルトを求めて街へ

  3. ママ元気? 人を殺めたい日々ですが梨を綺麗に剥いて過ごすよ

  4. 包丁のWikipediaを読みながらショートケーキと彼を待ってる

  5. 買ってくねあったら便利と思うから猫のラベルの大きな酒瓶

  6. 鏡張り陽の射すとこで死なせてね五年経っても汚い命

  7. 過ぎるひとみんなの瞳に夕焼けが反射しなんだか街ごとが性

  8. 爪だけがきれいな女に足踏まれいよいよ輝く天使の輪っか