CHARIOT

 最近はいろんなことをちょっとずつやっている。

 

 思えば6~7月は占いの勉強を始めたばかりだったこともあり、他の趣味に費やせる時間がほとんどなかった。スタート時の勢いに任せて根を詰めることも大事だが、そんな状態がずっと続いていればちょっとずつフラストレーションも溜まってくる。そこで8月は意識的に気分転換をはかろうと、最初から心に決めていた。

 

 結果としては、まず、読書量が増え、占い関係以外の本をたくさん読むことができた。といっても遅読なのでひと月で5冊程度だが、宇野千代の『或る一人の女の話/刺す』等ピンポイントで刺さる作品に出会えたので、よしとする。

 ワクチンも2回目の摂取が終わり、お盆休みには恋人と青森にも行ったし、ひさびさにフォロワーとオフ会をするなど、全体を通して見ればかなり充実していた月だったと思う。しばらく前に立てた「2021年下半期で300首詠んで来年の現代短歌社賞に出す」という目標のために今月もまた30首ぐらい短歌を詠んだし、創作活動の方もまあまあ順調と言える。

 

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 私が参加している文芸サークル『鯨骨生物群集』の企画

 

 

 

 に提出した小説『防腐剤入り白昼夢3DOZEN』が公開されたので是非読んでください)

 

 とはいえもちろん占いに対する意欲が完全になくなってしまったわけではない。日々の生活の中でできる限りタロットカードに触るようにはしていたし、まとまった時間があって、且つ、他に優先してやりたいことがなければ西洋占星術の勉強にあてていた。また、単に知識を詰め込むだけではなく、実践の機会を求める気持ちも持ち続けており、自分の身の回りにいる人間のホロスコープを勝手に見て・分析する新手の覗き行為なんかはまったくやめられる気配がない。

 最近ではいい加減ネタが尽きてきたため、好きな作家のホロスコープを見ることにハマっているのだが、やはり個性的な人物ほどちょっとギョッとするような星配置の持ち主が多くておもしろい。谷崎潤一郎の旺盛な創作意欲はライツが火星座で固まってる(太陽・獅子座/月・牡羊座)影響かな、とか、三島由紀夫の月乙女座は確かに「っぽい」なあ、とか、宇野千代の射手座コンジャンクション祭りすごいなあ、なんて考えてひとりでにやにやしている。楽しい。この話は始めると長いので機会を改めてまたしたい。

 

 

 それで急といえば急なのだが、今日からチャット占い師としてデビューすることが決まった。おめでとう!

 

 と、手放しで言える話か?と考えてみると実はぜんぜんそうでもない。

 

 勢いで求人に応募してみて、受かったところまではよかったものの、いざ実際にその世界を見てみると、運営側が持っている「占い師の先生にはこういうふうに立ち振る舞ってほしい」という要望があまりに"パターン"としてできあがり過ぎていてなんとなく息苦しかったり、稼ぐために必要な営業努力が想像以上に苛烈だったりして、全体的につらいものを感じる。金銭のやり取りが発生する以上、求められていることをするのは当然だとは思うが、それはそれとして、「これが本当に私のやりたいこと/なりたい占い師像なのか?」という疑問がどうしても湧いてきてしまい、いろいろ考えていると食あたりに似た気持ちの悪さを胃に感じる。

 

 とはいえ、前に進みたいという欲求があったことや、そのために新しい行動を起こしたこと自体は良かったと思う。

 一度腹を括ると早いタイプなので、運営側の言うことに素直に従い、理想とされるプロフィール文と写真を用意したところ、一発でオッケーをもらうことができた。これでもう、いつからでも占い師として仕事を始めることができる。実際にやってみてどうなるかはともかくとして、自分の看板を出しても許される"場"が用意されたことはけっこう嬉しかった。

 

 恋人にこのことを話したところ、

 

「ちょっと聞いただけだけど、そのシステムで稼ごうとするのは良くないと思う」

 

 と、即座にツッコミが入った。

 

「まず、営業努力がしんどすぎる。客からの反応がまったくない、待機してるだけの時間も含めて時給換算してみたら1h500円も稼げない、とか全然ありそう。挑戦すること自体は悪くないが、あくまで経験値を積むためと割り切ったほうがいい」

「もし本当に占い師として稼ぐつもりなら、対面でのコミュニケーションは避けちゃいけないと思う(宣伝にかける労力などを考えるとそれが一番コスパが良さそうだから)。そういう意味でもチャット占いというのはどうなのか。対面とはまた違うが、リアルタイムのやりとりのスキルを磨くことができるからこの前やろうとしていた電話占いはいいと思った」

 

 詳しい反対意見としては大きく分けて上記二つのようなものだった。前者に関しては顕在的に、後者に関しては潜在的に感じていたことだったので、よくもまあこんなに痛い部分をはっきり言語化してくれるなあ、と感心してしまった。一応、私なりに考えてやろうとしていたことだったし、いきなり冷静な意見を浴びせられてたじろく気持ちもあったが、無関心な「おめでとう」で済ませられるよりはずっと良かったと思う。というか、冷静に考えてみればみるほど本当にありがたい。私がやろうとしていることの内容を真剣に検討してくれてありがとう。

 

 私がそれぞれの意見に対し、

 

「割りに合わないことはなんとなく勘づいているし、無理があると思ったらすぐにやめる。また、あなたがいうようにある程度期間を決めてやるようにする(まずは1ヶ月試してみてあまりにも意味がないと感じたら見切りをつける)」

「最終的にオーソドックスな対面占い師になりたいという思いもあるが、そもそも現段階では電話占い師の面接ですら落とされてしまう現実がある。取っ掛かりはなんでもいいから、まずは場数を踏んで、実例を自分の中に積み上げたい。例えばだが、お客さんのカルテを作るなどして、『こういう相談に対してこういうカードが出た』『その上でこういう解釈をした』と書き留めながら、実践を伴う勉強をしていきたいのだ」

「私は対面でのコミュニケーションが苦手だが、その反面、文字を使うことが得意である。チャット占いというのももしかしたら私の性分に合っていて、うっかり稼げてしまうかもしれない(たぶんないが……)」

 

 と返すと、恋人も納得してくれたようで、今度は

 

「さかなちゃんが考えてやろうと思ったことに対して、いきなり上から目線で厳しいことを言ってしまってごめんね。確かに、意外と稼げてしまう可能性だってなくはないし、経験としてやってみるのはいいと思う」

「さかなちゃんは対面でのやりとりが苦手って言うけど、実際やってみたらすぐ慣れると思うよ」

「というより、あなたにはミステリアスなオーラがすごくあるからそれを活かせないのはもったいないと思う」

「なんだかんだ言ったけど、小さい頃からずっとそれが好きっていうのがまず才能だし、お金にならなくても無限に勉強できるっていうのもまた才能だよ」

 

 なんて言って励ましてくれた。まさに飴と鞭。ダメなものはダメとはっきりいうが、それで終わらせずきちんとフォローも入れてくれるのがこのひとのすごいところだよなあと改めて思った。「パートナー」ってまさにこういう存在を言うのだろう。唯一、私にミステリアスなオーラがあるという部分だけちょっと引っかかったけど(前は喜んでいたが冷静に考えてみると彼以外の人間にそんなこと言われたことない…)、それだってそんな風に言ってくれる心がまず嬉しかった。

 

 さて、二人の意見が一致した部分をまとめるとこんな感じになる。

 

・とりあえずやってみるのはいい。

・ダメだと思ったらすぐに撤退。無駄なことで私生活を犠牲にしない。

・時給換算はきちんとやる。

・稼ぐ目的ではやらないほうがいい。

 

 なんとも夢がないとは思うが現実はこんなもんだ。

 

 

 それにしても、と思うのは、恋人のこの現実感覚の鋭さについてだ。太陽・山羊/月・牡牛でライツが土星座で固まっている他、知性を司る水星が山羊。破壊と再生を司る冥王星アスペクトが集中している影響なのか(月がオポジション、金星がスクエア、太陽・水星・海王星セキスタイル)、人生にの分岐点おいてけっこう大胆な舵取りの仕方をすることが多く、他人に対しても「やったれ!」「やめろ!」と極端な発破のかけ方をするが、ベースの性格にはかなり土要素が出ており、今回のようにちょっとした話し合いをした際には案外堅実思考だなあと感じることが多い。やれやれ、とはいうが、損をするなら絶対やるな、というタイプ。

 

 対する自分はどうか?と考えてみるとこちらはかなり火の要素が強い。まず、太陽・月の二つの惑星で牡羊座がコンジャクション。さらには太陽の牡羊座、火星の獅子座、木星の射手座が火のグランドトラインを形成しており、とにかく情熱的な星まわり。他人から思われる以上にエネルギッシュで、やる気と熱意に満ちている人間なのは自分でも認める。ただ、往々にしてスタートダッシュで全ての火力を使い切ってしまうため、何かを継続させていくのは苦手。これはおそらく土エレが弱い影響もある(かろうじてアセンダントが山羊だけど他は天王星海王星にあるのみ)。

 

 タロットカードのCHARIOTが象徴するものにも見られるように、「前進」は情熱と理性の両輪が同時にまわっているときにしかうまくいかない。エネルギーと勢いだけで突っ走ろうとすることが多い私には、自分の頭できちんと考えて、冷静な言葉をかけてくれる恋人の存在が絶対的に必要だな、と改めて感じた。