WHEEL OF FORTUNE

 秋だねえ、鯖が大好きさかなちゃんだよ。今日は体調が優れず仕事を早退しました。

 最近、かなり涼しいし、暑さにやられる心配はもうないだろうと決めてかかって油断していたのだと思う。家に帰って薬を飲むとほどなくして回復したので、こんなことなら職場にも常備薬を用意しておくべきだったな、と後から反省した。私ひとり欠けたところでどうにでもなる仕事ではあるけど、周りに心配をかけたり、必要以上に気にかけられたりするのは好きじゃない。

 

 回復した後は恋人と一緒にお昼ご飯を食べたり、布団の上でのんびり歌集のページを繰ったりして過ごした。

 先月入手した堂園昌彦『やがて秋茄子へと到る』がやはりものすごく良く、一首一首を反芻するたびに甘美な溜息を漏らさずにはいられない。現在のすこしさみしげな気候にもよく合っているし(というか、タイトルがタイトルだし…)、増刷が決まったこのタイミングで購入出来て本当に良かったと思う。装丁から何まですべてがすばらしいので、ここのところは会うひと会うひとすべて、それこそ短歌をやったことがない人間にまでこの本の自慢をしている。

 はじめてこの人の歌に出会ったときは、似たような語やイメージが頻出しているような印象を受けてしまい、いまいちピンと来なかったのだが、いまではその「静かな過剰さ」がたまらない。醜いものを徹底的に排して作られた、完璧なうつくしい心象風景たちが一冊の本に閉じ込められている、というふうに感じる。私もこんな風に自分の生活を眺めることができれば、とは思うが、並大抵の努力では無理だろう。

 

 

 

 前回の記事で書いたチャット占い師についてだが、そういえば一晩で挫折した。わかってはいたことだけど、占い鑑定をするまでに必要な努力が多すぎるのだ。試しに一時間ぐらいサイトに張り付いていろんなお客さんに営業メッセージ(お悩み拝見いたしましたので、よかったら占ってみませんか?という旨のもの)を送ってはみたものの、返事が来ることはほとんどなかった。また、たまに来たと思ってもすぐにやりとりが途切れてしまう。こんな無駄ことをしている暇があるなら、もっと身のまわりの人の悩みを聞くとか、勉強に時間をあてるとかしたほうがずっといい……。

 

 そう思った私はすぐ行動に移すことにした(こういうところがめちゃくちゃ牡羊座なんだな、と最近気が付いた)。

 

 Twitter質問箱を設置して、「まだ勉強中ですが、タロットと西洋占星術ができます。DM・リプライでも受け付けます」と呼びかけを行う。すると何人かの心優しいフォロワーさんが反応してくださったので、不慣れながらも一件一件返していくことにした。まだ知識が完全には身についていないせいもあり、言葉を選ぶのにかなり四苦八苦したが、フォロワーさんのことを思って真摯に占い結果と向き合った。当たる・当たらないはひとまず置いておくとしても、好きでフォローしたり、フォローされたりしている人物相手に絶対適当なことを言いたくない。やるからには今できる範囲でしっかり応えたい。

 

 そんなことを考えていてふと思い出したのは、以前読んだ『占い師入門』(著・高橋桐矢)に書いてあった「そもそも、占いは、商品の売り買いで儲ける仕事ではありません。人の悩みや苦しみに関わる仕事です。占ってもらいたいと思うのは、悩んだり苦しんだりしたいるときです。」という言葉だった。

 確かに、私が占いを本格的にやろうと思ったきっかけは「金銭的」なものだったし、わかりやすい進展がない日々になんとなく焦る気持ちはあったが、もしかするとそれで最近、何か大事なことを見落としかけていたのではないだろうか?

 後から前回の恋人との会話を思い返して見ると、「チャット占い師になれる!儲かるかもしれない!」と息巻く気持ちが先行し過ぎていて、「人が占ってもらいたいと思うのは、悩んだり苦しんだりしたいるときだ」という視点がすっかり抜け落ちていたように感じる。占う対象をチャット内のお客さんからフォロワーさんに置き換えてみてようやく気が付いたのだが、誰だって、占いに頼らないと解決できないような悩みなんかないに越したことはないのだ。確かに経験は積みたいし、占いを通じて誰かとコミュニケーションを取るのは楽しいけれど、いっちばんいいのは全人類みんなが毎日死ぬほど幸せで、楽しくて、毛布はフワフワで、ご飯は美味しくて、私に話す悩みなんか一個もないことだと思う。

 

 だからとりあえず、もうしばらくは「いかに占い師を職業にするか?」というテーゼについては考えないでおくことにした。それよりいまはちょっとずつでも勉強を続けて、占いを楽しんで、たま~に頼ってきてくれたひとがいれば誠実な対応ができるよう努力したい。「占い師」が人の心と向き合う職業である以上、先回りをしてはいけないような気がした。

 

 

 それで本当に思ってもみなかったことなのだが、先日、DMで相談を持ちかけてくれたフォロワーさんのひとりが、「こんなに丁寧にみてくれてありがとう」と言ってお礼にLINEのスタバギフトをくれた。上に書いたことと矛盾するようだが、これはこれでものすごく嬉しい。「あなたがしたことには価値がある」ということを説得力のある形で示してもらえたような気がして、とにかく胸がいっぱいになった。私は占い師としてまだ未熟だし、遠慮した方がいいのでは……?とも思ったのだが、自分の言葉にまつわる責任とお金の関係について考える意味でもいただいてほんとうによかったと思う。フォロワーさんが律儀な人だったというのもあるだろうけれど、自信を持っていいよと言われたような気がしてとっても励みになりました。この調子でこれからも修行をがんばりたい。