さかなちゃんのすべて

さかなちゃんのからだは

海を知っている 深く深く 潜ったこともある

さかなちゃんのからだは

シンガポールの夜を 一度 通過したことがある

さかなちゃんのからだは

ほんのすこしのコーヒーで いつでも おかしくなれる


でも あなたは知らなかった


さかなちゃんのからだが

ついさっきまで 部屋の中央で旋回していたことを

さかなちゃんのからだから

青い石が飛び出して 床で砕け散る瞬間を

さかなちゃんのからだに

そっと埋め込まれている あのこの瞳を その場所を


さかなちゃんのすべて とは

いつだって はじめましてのからだ

そこには何も書かれていない


ただ あなたが見たままのからだ