大阪旅行 西成散歩

十一月二十日(土)

 

 九時起床。今回の旅はガッツリ観光をするというよりも住むようにゆるく楽しむことが目標なので、当然今日の予定も特に決まっていない。

 が、話し合いの結果やっぱりこの近辺をもう少し探検したいよね〜ということに。


 正直、「西成に隣接してるこのへんって色々とどうなんだ……?」という思いもあったのだが、昨日の夜歩いた感じだとまあ、普通のサラリーマンや若い女性もけっこう見かけたし、親切なひとからもらった釜ヶ崎(=西成)ガイドマップにも「昏睡強盗やスリ、喧嘩、放火の類は発生することがあっても拳銃は出回っていません」って書いてあったので……。たぶん、死ぬようなことはないと思う。ここで生まれ育ったという小学生とも「そこら中にあるカラオケ居酒屋って普通に入っても平気なのかなあ?」「うんうん、全然大丈夫だよ〜」という会話をしたぐらいだ。

 注意や慎重さが必要なのは事実だし、あまり安易におすすめできるスポットではないんだろうけど、噂に聞くよりは安全な場所なのかもしれないと思った。


 それに、ここにしかない異世界感に興味を惹かれたのも事実だった。昨夜は新世界のあたりから動物園前一番商店街まで歩いたのだけど、あのダーティさはなかなか言葉で言い表すのが難しい。雑多でゴテゴテしていて薄汚く、独自の雰囲気と文化があり、日本にいる感じがあまりしなかった。いままでに行ったどんな街にも似ていない場所だ。

 私の恋人はバックパッカーとして何度か海外を旅したことがあるのだが、「インドを安全にした感じだね〜」「台湾感もあるな」などとしきりに述べては興奮していた。ホンマか?


 本音を言えばちょっと不安だけど、恋人はこの土地のことをかなり気に入ったようだったし、ここが日雇い労働者の方やホームレスの人にとって生活の場であることを留意した上で歩き回るぶんにはまあ大丈夫だろうと、最終的には判断することに。

 

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 というわけでとりあえず出発。宿の近くにあった『カフェ・ド・イズミ』でモーニングを食べた。二人合わせて九百六十円。千円いかないんだ、と思わず笑ってしまう。


 しばらくのんびりした後は店を出てぐるっと散歩。あんまり写真を撮ったりできないエリアも軽く歩いてみる。

 それで実際にいろいろ見ていると、怖いというよりはむしろ切なさや、場違いなところに来てしまったことに対する後ろ暗さを感じた。いや、人の生活を見て切ないという感情を抱くのもなんだかなあとは思うんだけど。


 聞くところによると最近ではこのあたりでも高齢化が進んできているらしく、その影響もあって以前より落ち着いてきているんだとか。そういう情報を知るとまた街の見え方が変わってくる。普通に考えたら喧嘩やトラブルがないのはいいことなんだけど、ある意味では活気がなくなってきているのかも……。


 観光気分できちゃいけないよ、というのもわかるんだけど、こうやって実際に歩いてみて何かを感じ取ったり物事を考えたりするのは決して悪いことではないよね、と恋人と話した。それをきっかけに何か人のためにできることを考えたりする場合もあるわけだし。

 

 私は仕事をすぐ辞めちゃう上に家出癖まであるから、男だったらこういう道(ホームレス)もアリだったのかもなあなんてうっすら思ったりもした。でも考えてみれば、女だからホームレスにはなれない、というところにもいろいろと問題を感じるよなあ。理論上はいてもおかしくないはずなのに、今回はまったく見かけなかった。


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 体力的にも精神的にも疲れてきたので少し道を戻って休憩。天王寺公園すぐ近くのアーケード内にある『喫茶ニューワールド』へ。珍しくいちごフロートを頼む。かわいい。

 

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 いろいろ考え込んでいるうちに元気がなくなってしまったので、チーズ入りたこ焼きを買って一旦宿へと戻る。八個入り五百五十円。一粒一粒が本当にでかい。これじゃあお金は足りても胃袋のほうが足りないよ〜。

 大阪に来て本当に不思議だと思ったのは、こんなに安くて美味しいものが溢れているのにもかかわらず、歩いてる人たちは全然太っていないってことだ。全員アメリカ人みたいな体型しててもおかしくないのに……。帰った後で体重計に乗るのが今から怖い。

 

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 部屋で昨日もらったガイドマップ『釜っぷ!』(NPO法人こえとことばとこころの部屋制作)をパラパラ読む。勉強になります。

 

 心の調子が悪いので今日はこんなところで終わり。