丸いピンクのマグカップに
淹れたての珈琲を注ぐ
あるいは
チーズケーキを十六等分にしてみる
いまこのフロアにいる人数分
作りすぎちゃった肉じゃがは
いつだって近所におすそわけだし
エプロンのポケットは
転んでしまった子に渡す
ミックスフルーツ寒天でいっぱい
私まで転んだらどうするの?って
全部の色がつぶれて混じったら
真っ黒になっちゃうよ
やさしい人っていわれると
どうしたらいいかわからない なぜか
ぎこちなく笑ってみても
欠けてる小指は戻らない
私におへそがないこと
みんな知ってたくせに
実はペンギンから生まれてきたんだ
そんな嘘をついて
おもちゃの飛び出しナイフ
あなたを刺したい
血は出ない
私たちみんな
やさしさに似てるんだったね
(☆ココア共和国2022年3月号佳作集Ⅱに掲載していただきました)