生きることに栞をくれる喫茶店 で

あなたがしたことを考えていました

白百合の花粉で手を汚すのは

もうこれきりにしたかったの

 

ずいぶん若いんだね

あの青年実業家

あの家の猫

あの子

 

そういって

ゆっくり瞬きをしたかった 春

 

世界地図をひらいて

すべてのとげとげにリボンの絵を描いてみても

なにひとつ 思い通りにはならなかった

 

だったらいっそ

灯台で手紙を燃やしましょう

愛を覚悟にしてしまおう

 

壊れるまでは と

考えるのは

とてもかなしいけれど

壊れるまで は

そばにいたかったの

 

 

(☆ココア共和国2022年5月号佳作集Ⅲに掲載していただきました)