ソフィア なにもわからない

八月十七日(水)

 心細くて泣きそうです。なぜなら今日私はひとりだからです。この旅はじまって以来の別行動。夫は郊外の町まで長ズボンを買いに出かけました。ついでに近くの博物館にも行ってくるそうです。とても真似できそうにありません。

 海外旅行未経験・英語レベル小学生以下の私ですが、そもそもここは英語圏ですらないブルガリア。観光客も多く、英語が話せる人も中にはいますが、あくまで公用語ブルガリア語です。英語も話せないのにブルガリア語なんて。以前から英語が苦手だと言い続けた私ですが、この旅がはじまってようやく「"わからない"にもレベルがあって、他の言語に比べたら英語はまだ"わかる"方」なんだと気づきました。だって、苺は英語でStrawberry、林檎はApple。じゃあブルガリア語では?わからないですよ。「このぐらいの単語は小学生でも知ってるさ」みたいな認識がいかに驕りであったか気がつきました。どんな言葉も知っていて当たり前ということはないのです。


 とはいえ今日の別行動が楽しみでなかったかというとそういうわけでもありませんでした。夫に不満があるわけではありませんが、旅がはじまって早一ヶ月、もうそろそろ自分の気分と計画だけでコントロールできる一日が欲しくなる頃合いです。別に何か特別なことをしなくても良いから、日本にいた時と同じようにその辺をひとりで散歩して、カフェで気が向くままにぼんやりしたり、化粧品や服を買ったりしたい!というのは前からなんとなく思っていたことでした。また、夫も夫で「さかなちゃん一人でも町を歩けるようになってくれたほうが安心」と言います。いま泊まっているところであれば程よく都会で治安もいいし、それならさっそくやってみようか、という話になり合意に至ったのです。だからこれは私も望んでいたことなのですが、でも……。

 

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 えーんえーん!やっぱり心細いよー。どうして……?街へ出たのはいいですが、おしゃれなカフェに入るのはどうしてもハードルが高くてダメでした。そして悩みに悩んで入ったマクドナルドで注文がうまく行かずに馬鹿でかいバーガーと馬鹿でかいコカコーラが出てきてしまって泣いている。一応頑張って「Can I have……」から注文を始めたのですが、メニューの字がブルガリア語で読めなかったので途中で言語は諦めました。というかそもそも店員さんがブルガリア語を話してるのか英語を話してるのかもわからなかった。パニック。カウンター上にメニュー表がなく、上空の写真を指さして注文を伝えるのでちょっと踊ってるみたいになりました。つらい。店員さんが感じのいい笑顔のひとでせめて良かったです。

 

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 どうにか食べ切って散歩を再開。適当に歩いていたらよくわからないところに出ました。せっかくだし動物園に目指そうかなと思ったのですが、遠いし諦めようかな……。

 

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 いい感じの公園を見かけたらひとまず座る。

 

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 広い道を歩いていたらだんだん楽しくなってきました。帽子をかぶろうとしてリュックを見たらチャックが開いたままになっていてびっくりです。防犯意識とは。

 

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 動物園の看板発見!

 が、その後すぐ道が途絶える。歩きで行くような場所ではなかったのかもしれないです。帰りの体力も不安だったので、この辺で折り返すことに。

 

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 コスメ中心のドラッグストアを見かけたので入ってみました。オールインワンジェルがなくなりかけていたので、次の国へ行くまでに買っておきたかったのを思い出したのです。たまたま日本製品を見かけて、その値段の高さに驚きつつも(日本では千円ぐらいの製品が倍ぐらいする)ちょっと嬉しくなりました。

 

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 いろいろ悩んだ末に買ってみました。肌に合うかどうかはわからないですが、選ぶ過程が楽しかったです。けっこう乙女としての喜びを削りながら旅をしているので、ひさびさにこういうことができて良かった。夫は私が旅のせいでおしゃれできなくなるのを気にしているので、こういう狙いもあって自由に遊んできなよと言ったのかな、と思いました。

 

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 気持ちいい天気なのでしばらく外で本を読んで過ごします。


 振り返るまでもなく何もできなかった一日ですが、オフラインマップを落として気になるお店を事前にサーチしたり、お店で注文する際困らないように好きな食べ物をブルガリア語でメモしたり……そういう準備の部分も含め、自主的に動き回るのは楽しかったです。何でもかんでも夫に頼りっきりにするのではなく、こういうチャレンジ精神を持つことも大切だと思いました。次こそはチェーン店以外のお店で食事してみたいです。