八月三十日(火)
九時半、宿をチェックアウト。この子ともお別れだ。どうも夫のことを特別気に入ってくれたらしく、かまってかまってと足に飛び付いては舐め回して涎まみれにしていた。朝食を食べ終わって一旦部屋に戻る時も、リュックに食いついてなかなか離してくれなかったぐらいだ。犬、いいなって思った。
☆
今日から四日間ビーチ沿いの街・ヒマラに宿をとっているので、まずは中継地のサランダを目指してバスを探すことに。宿近くの大通りにバスの運転手っぽい人たちが集まっていたので、声をかけてどこに行けばいいか聞いてみるとなぜかタクシーを案内された。
え〜?と思いつつ、運転手のうちのひとりが携帯に英語を打って説明してくれるようなのでとりあえず読んでみる。
「他に誰も乗合がいない場合は三千レク(役三千五百円)かかる」
なんですと?!いくらなんでも高すぎる。まあタクシーの値段だと思えば別にぼったくりってわけでもないのだが、それはそれ、これはこれ。バスはないのかと聞いてみてもタクシーを指されるばかりだし、なんだかな……と思って一旦撤退&真向かいにあるバス会社のオフィスっぽいところへ行ってみることに。
そこにいたお姉さんにもう一度同じ質問をしてみると、手招きして時刻表を見せてくれた。バス、あるじゃん!しかも値段を聞くと一人五百レク(約六百円)という。さっきと全然違う。あっちで聞いたら三千レクって言われたよ〜と話すと笑っていた。これだから気が抜けないよね、と夫。
結局お姉さんがまた別のバス停まで案内してくれて、無事サランダ行きに乗り込むことができた。ありがとう。
サランダ到着。酔った……。ヒマラ行きが出るのは一時間後らしいので、バッグパックだけ預けて軽くお昼ご飯。時間が空いてくれて本当に助かった。
途中警察の検問にドライバーが引っかかって「このまま逮捕されるのかな?」と思ったりもしたが、無事再出発してくれたのでよかった。長引く検問におばあちゃんがキレ始めたり、乗客全員で「やれやれ」みたいな顔をしながら外で待ったりしたの、楽しかったな。
ヒマラ来た!トルコ以来ひさびさの海だ。午後二時過ぎても三十度越えで真夏の気温なので、みんな気持ちよさそうに泳いでいる。
そして今日からの宿がこちら。キャンプサイトのテントだ。手ぶらで崖っぷちに泊まれると聞いて遥々ここまでやってきました。究極ってかんじがしてなかなかテンションが上がる。
案内してくれたスタッフさんの話によると、なんと私たちが日本人ではじめてのお客さんらしい。そう聞いて反射で「ワオ!」とかリアクションしちゃったけど、よく考えたらそりゃそうよ。ここどこなのよ。
海が目の前にあるのでいつでも入ることができる。嬉しい。
十八時。お昼寝から目を覚ますと虹が出ていた。素敵。夫が街で買ってきてくれたパンを食べて夕飯とする。シャワーを浴びたら冷水しか出なかったけど、けっこう楽しいです。
二十時。暮れた。
八月三十一日(水)
明け方頃、夫と同じタイミングで目が覚めた。ラッキー。暗い中ひとりでトイレに行くのは怖い。染まりかけの海が綺麗だったので思わず写真を撮った。
八時起床。
テントサイト前の海は足がつかなくて怖かったので、坂を降りて近くの砂浜へ。朝からケーキを食べた。うちは夫のほうが甘党なのだが、物価が安いのをいいことにマケドニアあたりからちょくちょくこういう悪いことをしている。血糖値の上昇が怖い……とは思いつつも誘われるとなかなか断れない。だって美味しいんだもん。
ビーチに刺さってるパラソルたち。やたら個性豊かだなと思っていたら、なんと全部各ご家庭からの持ち込みだった。来てすぐ使えるよう、地元の人たちがそれぞれ好きなところに差しっぱなしにしているみたいだ。海辺の住所って感じがしておもしろかった。今日入れてあと三日はここにいる予定なので、私たちも思い切って一本購入することに。二千二百レク(約二千六百円)だった。あと一回か二回海に入れば充分元が取れる。
かっこいい石を拾った。アルバニアっぽい色。
シーグラス拾いにも熱中した。海の中側のほうが大きくて綺麗なやつを拾える確率は高いのだが、あまり潜り過ぎてもせっかく手に入れた宝物を波に攫われてしまうので、粒揃いを集めるのには注意が必要だった。石は拾ってもリリースしてしまうことが多いけど(重いのでね)、これに関しては頑張ったからちゃんと持って帰りたい。要らないレシートを袋型に折ってひとまず保管に成功した。
エメラルドグリーンの海。
夢中になって砂と石に向き合っていたらいつの間にか十三時を過ぎていた。お腹ペコペコだ。近くのピザ屋さんで腹ごしらえをした。一生こういう生活ができたらいいのにな。
今日は三日月だった。