九月三日(土)
朝七時起床。夫はまだ寝ているみたいだったので、そっとテントを抜け出してしばらく海を眺めていた。今日でこの崖っぷちともお別れだ。もう一度嵐が来たら面白いのにと思ったけど、結局昨夜は平和なままだった。
しばらくすると夫も起きてきたので、ゆっくり準備をしつつも十時前には宿(?)をチェックアウトした。
今日のケーキたち。色とりどりの銀紙に包まれたお菓子が何種類か並んでいて気になったので、試しにひとつ頼んでみた。キャラメリゼされたナッツを薄いチョコレートがコーティングしていて、スニッカーズみたいな感じだ。美味しかった。
十一時、ひとまずティラーナ行きのバスに乗車。今日はそこからさらにシュコダルという街まで行って一泊する予定だ。一日で一気に北へ動く。そこまで行ってしまうと次の国・モンテネグロとの国境も近い。
思っていたよりも時間がかかってしまい、折り返し地点で休憩したのが十四時過ぎとかだった。三時間経過してまだ半分か。バス酔いでしんどい。どうにか山道は抜けてくれたみたいなので、目を閉じて無心で過ごす。
十六時ちょっと前になってようやくティラーナに着いた。シュコダル行きのバスを探す。お腹が空いたけど、気持ち悪くなるのが怖いのでとりあえず我慢した。
△HAPPY BRITH DAY NIKITA/誰?
十九時、ようやくシュコダルに到着。長かった。あまり遅くなるとチェックインに支障が出そうなので、ひとまず予約してある宿へ。
が、呼んでも誰も出てこない……。たまたま近くのキッチンにいたお兄さんが「たぶん上で寝てるよ。呼んでくる」と言ってくれたが(時間的にシエスタ中?)、結局降りて来ず。親切にミントティーをお裾分けしてくれたので飲みながらしばらく待った。
やっぱり来ないね!
予約サイトの情報によると二十三時ぐらいまでチェックイン可能みたいなので、一旦街に出て夕飯を食べることにした。アルバニアの料理はギリシャとイタリアのいいとこ取りみたいな感じでうまいし安いのでつい頼み過ぎてしまう。
帰りにスーパーへ寄ってシャンプーと日焼け止めを買い足した。他にもいろいろあったけど美容に関しては安全に倒したいので自然とPANTENEかNIVEAの二択になる。なければベビーかキッズ用。
スーパーの前で寝てた犬がかわいかった。シュコダルに来てから野良犬の顔つきが優しくなった気がする。
△飼い猫ならいた
宿に戻ったがやっぱりスタッフらしき人物の姿は見当たらず……どうしたものかと途方に暮れていたら、なんとたまたま居合わせた元従業員のお兄さんが代わりにチェックイン業務をやってくれた(!)。なんでも、友達(たぶんゲストハウスのマネージャー)に会いにきたのにいないから帰ろうとしていたんだとか。無償なのにシャワーの場所やWi-Fiのパスワードまで丁寧に説明してくれた。ありがとう……。
お兄さんがいなかったら野宿の可能性あったな、大丈夫かこの宿、という一抹の不安を感じつつも、なんとか無事に一日を終えることができそうでよかった。
九月四日(日)
朝起きてすぐ、「しっかりした壁や床がある、いわゆる"家"って安心感があるな」みたいなことを思った。文明っていいな。
八時から朝食が出るとのことだったのでありがたくただいた。昨日はいなかったスタッフの人がせっせと立ち働いている。同じタイミングで席についた人が話しかけてくれて、それに夫が受け答えするのを寝起きの頭でぼんやり聞いていた。ちゃんと眠ったはずなのにまだ眠い。食べ終えて自分の食器を片付けるとすぐ部屋に戻って二度寝した。
昼過ぎ、目を覚まして二人で街を散策。喫茶店に寄り、一時間ぐらい手帳と日記帳を書いて過ごした。アルバニアに来てから移動が多かったり、宿がテントだったりでなかなか出来なかったので嬉しい。夫はその間ずっと本を読んでいた。
△共産主義に抵抗する人々の像
△スタジアムに貼ってあった禁止事項一覧
喫茶店を出て散歩再開。
共産主義と一口に言っても国によっていろいろあるみたいだが、ことアルバニアにおいてはかなりはっきり忌み嫌われてるみたいだ。
十五時。相変わらず眠い……というか脳に栄養がいっていない感じがしてクラクラする。たまにこういう体調の日があるなと思った。
アルバニアはヨーロッパの中でもイスラム教が強い国のようで、街中を歩いているとモスクと教会の両方を見かける。
帰る前に夕飯。入ったレストランが大当たりだった。サーモンとネギのパスタが美味しい。麺の内部から味を感じた。
かわいい壁を眺めつつ宿に帰宅。
近くの山を登るために明日からプチ遠征するので、二人で荷物の整理を行った。