サラエボ 最後の晩餐

 

九月十二日(月)

 今日は二人とも体が重くて十時過ぎまで寝ていた。

 

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 朝ご飯は昨日の帰りに買ったロクムの詰め合わせ。砂糖と澱粉、ナッツを混ぜて作られたゼリーみたいな食感のお菓子だ。発祥はトルコ。イスタンブールの土産物屋でもよく見かけたが、結局食べず終いだったのでずっと気になっていた。

 

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 十四時過ぎになってようやくお昼ご飯。ブレクという名前のパイを食べた。こちらもトルコが発祥で、バルカン半島ではよく見かける料理だ。明日でボスニアを発ち、オーストリアのウィーンに行く予定なので、このあたりで一度食べておきたかった。

 

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 食後は前から気になっていた喫茶店へ。入口からして重厚な雰囲気がある。店名『Zlatna ribica』を掲げるかわりに金魚の彫刻を施しているのも素敵だった。

※ Zlatna ribica…ボスニア語で金魚

 

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 アンティーク調の店内もたまらない。日本の純喫茶が好きな人には刺さる雰囲気だと思う。

 

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 メニュー表がトランプカード。お洒落。

 

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 夫はビールを、私はダークホットチョコレートを頼んだ。クリームにシナモンがかかっていて美味しい。

 

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 余ったボスニア通貨を消費するためにちょっと良いレストランで夕飯を食べた。全部で三十二マルク(約二千三百円)。安い。ウィーン以降はひたすらパンと林檎を齧って過ごす予定なので、最後に美味しいご飯を味わえて良かった。

 

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 帰り道。すっかり秋の空だった。

 

九月十三日(火)

 七時には目を覚ました。三十分ぐらいで身支度を済ませ、宿をチェックアウト。

 

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 ただの小石で猛烈に遊んでる猫がいてかわいかった。

 

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 バス停の近くで朝ご飯。ミートパイだと思って指差しで頼んだやつがアップルパイだった。

 

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 九時半。いよいよウィーン行きのバスに乗車。予定移動時間は十四時間三十分となっている。これまでの行程でいうと確かトルコのフェティエ・イスタンブール間がだいたいそのぐらいだったはずだ。だから最長記録更新というわけではないが、それにしたってという感じ。国境を二つか三つ越えるので仕方ないとはいえ、長い。

 が、私も慣れてきたもので、今回の移動のことは実はけっこう楽しみにしていた。なんといっても時間帯が昼なので外の景色を楽しめる可能性が高いし、それに飽きたら飽きたで自分を楽しませるための何かを色々と用意してある。

 Spotifyでは昔好きだったバンドや気になっていたアーティストの音楽をダウンロードしまくったし、Kindleのアプリにも読みやすいエッセイ系の本を中心に何冊か落とした。その中には帰国後に取る予定の資格の本も含まれているので、読書の気分が来なければ適当に勉強するのもいいだろう。画面に集中しすぎてバス酔いしたり充電が足りなくなったりする恐れはあるものの、そしたらそしたで目を瞑って短歌でも考えるまで。手元にはスマホだけじゃなくてノートとペンもあるから、雑に自動筆記みたいなことをしているだけでも充分暇は潰れる。どこからどう考えても死角なし!大好きなインドア派の遊びをたくさんできて嬉し〜!


 というわけでこんな長距離移動でもしんどいどころかむしろるんるんなのだった。座って出来る趣味が多い人間で本当によかったと思う。

 

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 移動中のおやつ。昨日の帰りに寄ったスーパーの中でいちばん大きかった板チョコだ。なんとこれ一枚で二百七十グラムもある!これを独り占めするのがずっと夢だった。すぐになくなってしまうと悲しいので、何日かに分けてちょっとずつ食べようと思う。本当に嬉しい。

 

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 十四時、ボスニアクロアチア間のボーダーを通過。

 ちょうど『阿佐ヶ谷姉妹ののほほん二人暮らし』を読み終わった。私は旅に出るまで高円寺に住んでいたので(阿佐ヶ谷の隣駅)、二人の暮らしをだいぶ立体的に感じることができたと思う。「あそこの西友ね〜」とか言って頷きながら読むのは楽しかった。一緒に住む中で生まれるちょっとした不満や愚痴、時に感じる相手のありがたみなど、ひとつひとつのエピソードから感じるおでんの湯気みたいな温度感も良い。

 

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 十七時。クロアチアの首都に着いた。ここで急に一時間の休憩が入る。ちょうど読書と資格の勉強、短歌作りを三交代でやって脳がヒートアップしていた時だったのでちょうどよかった。真っ青のファンタを見かけて気になったので夫に買ってもらい、一呼吸。

 

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 十八時、再度出発。結局縁のない街だったけど、秋の色に暮れていく姿がなかなか綺麗。あと五時間、楽しく頑張るぞ!

 

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 たまには英語の勉強でもしようと思って『Miffy and friends』の歌詞を調べていたらいつの間にかスロベニア国境だった。十九時十五分。

 スロベニアオーストリアは共にシェンゲン協定の加盟国なので、あとはノンストップでウィーンまで行くことができる。

シェンゲン協定…ヨーロッパの国家間において出入国審査なしでの国境越えを許可する協定

 

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 なんだかものすごい空。

 

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 休憩で立ち寄ったスロベニアのバスステーション。急におしゃれで近代的な雰囲気に。旧ユーゴスラビアの国々の中でもスロベニアは裕福なほうなんだと夫が教えてくれた。

 

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 二十三時半、予定通りにウィーン着。アジア人を見かける率が一気に上がった、というか中国の方が多すぎて中国に来たのかと思った。

 予約してある宿がバスターミナルからだいぶ離れているので、ひとまず電車に乗って最寄りの駅まで。

 

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 何の建物かわからないけどなんかもうすごい。バルカン半島のマイナーな国でのんびりするのも好きでしたが、これを見せられちゃあ。住宅地に停まってる車も高級車ばかり。もう深夜なのでひとまず今日は寝るだけですが、明日からの観光が楽しみです……。