九月三十日(金)
カミーノ巡礼二日目。周囲がざわざわする気配で目が覚めた。真向かいのベットに寝ていた人たちはもう起きて出発の準備を始めている。時計を見ると六時二十分。最悪日が落ちるまでに次の町へ辿り着ければいいので、そう焦る必要もないのだが、もうそろそろ私たちも起きなくては……。
「えーもう?みんな早いよー」とゴニョゴニョ言っている夫を起こし、身支度してひとまずキッチンに降りた。自販機でホットチョコレートを買って一息。代謝が上がっているのか、体が燃えるように熱かった。筋肉痛は意外とそこまで酷くない。
七時半、出発。雨は降っていなかった。それだけでかなりハッピーな気持ちだ。今日は二十キロ歩くだけ!
暗くて何も見えないので、明日はもう少し遅めに出ようという話をした。
サンティアゴ・デ・コンポステーラまであと七百九十キロ!
この看板の前でセルフィーを頑張っていたおじいちゃんに「写真撮って!」と頼まれて、ついでに私たちも交代で撮ってもらった。
△かわいいカミーノグッズたち
最初の町で郵便局に立ち寄り、要らない持ち物をサンティアゴまで発送してもらった。巡礼者向けに四十五日間局留めしておいてくれるサービスがあるのだ。夏物のワンピースやサンダルなど、使わないけど捨てるには惜しいも物がたくさんあったので大助かり。夫婦合わせて六キロ以上の減量に成功し、バックパックがだいぶ軽くなった。
これなら歩ける!と勇んで外に出たら雨が降っていた。くぅ〜。
美しい白い馬。
しばらく歩いているとまた別の町にたどり着いた。この時点で七キロ経過ぐらい。疲労感はあるものの、今日は昨日と違ってアップダウンの激しい道が少ないのでまだ楽だった。
九時四十分。ようやく朝ご飯。歩いていると体が肉を欲するなあ。
少し休んだらすぐ歩く。ザ・カミーノ!という感じの景色が広がっていてテンションが上がった。
上り坂、しんどい……!
空がちょっとずつ晴れてきて、ただそれだけが嬉しかった。
野ばら。
十一時。道の真ん中に川が流れていて、四角い石の上を飛んで歩くのが楽しかった。
かわいい看板。今日の目的の町・ズビリまであと十キロ!
また雨が降ってきたのでカッパを着ていたら、夫に「コロボックルみたいでかわいいね」と褒められた。
いい感じに撮れてしまった巡礼者の後ろ姿。
次の町で休憩ついでに昼ご飯を食べよう、という話をしていたのだが、いざ来てみると飲食店が一件も見当たらず……。仕方ないので荷物だけ下ろしてその辺のベンチで休んだ。ここで初めて日本人の巡礼者に出会う。実は最初の宿の時から気になっていたのだが、本当に日本人かどうか確信が持てなくて声をかけられずにいたのだ。「あとどのくらいですかね?」「二時間半ぐらいか〜だったらがんばれるかな」と軽く会話して別れた。
十二時半。あとたった七キロ。
誰かの忘れ物?
結果、めちゃくちゃに晴れた。もっとやれそうな気がしてきたので、目的地をズビリからその先のララソアニャに変更しようという話になった。そしたら明日は今日距離を稼いだ分早めに着けるから、町で買い物や観光ができる……いや、できたらいいな……という予定だ。
ズビリまであと一キロ、がんばろう!
十五時、ズビリに到着。二十キロ歩き抜いた。
最終目的地を目指す前にレストランで腹ごしらえ。プレート料理を頼んだらすごいサイズのお肉が出てきて嬉しかった。貪るように食べてエネルギー満タン!
今日はほとんど休憩なしでここまで来てしまったので、店では一時間ぐらいダラダラして過ごした。
十六時、再出発。意外と私たち以外にもララソアニャを目指して歩いている人を見かけた。
道の途中、困った様子で立ち止まっている女性に「絆創膏持ってない?」と聞かれ、二枚渡す。フレンドリーな人で、そこからしばらく話しながら三人で歩いた。中国語で「がんばれ」は「加油(ジャアユウ)」って言うんだよ、とか教えてもらう。
残り五キロ!
最後の数キロがひたすらに長く感じた。身体中のいろんな部位が変わりばんこで悲鳴をあげている。
十七時半。ついに来ました!ララソアニャ。結局二日連続で二十五キロ歩いてしまった。さすがにもう動けない。
いい街並みだ。
△チェックインするとクレデンシャル(巡礼証明書)にスタンプを押してもらえる
さっそくアルベルゲにチェックインして速攻でお風呂。そして洗濯。めんどくさいけど、早くやらないと明日の朝までに乾かないとわかっているので、気力でどうにか乗り切った。
うさたろもぐったり。
てもでも、今日がんばったおかげで明日は十五キロ歩くけば済む。だからといって別に大変じゃないわけではない……けど、多少は気が楽だ。
二十時ぐらいには眠くなってきたので、もう床に就くことにした。おやすみなさい。