左へずれる

バタークリームの塗られていない肌

鏡が消えた国境沿い

運ばれていく身体は

ただそこに在る身体だった


揺られているのは猫の天ぷら

いつかわたしから逃げたもの


肘から手首 手首から薬指の先

繋がっている不思議について

考え そして眠りに溶けていく


重すぎる身体は

どんどん左へずれていった

地球がゆっくり首を横にふって

みんな振り落とされそうなのを

わたしだけが気付いてる


水仙の絵

金星に灯る火

エメラルドグリーンのうた


そしてこの日記は

棺に入れて燃やしてください

 

(☆ココア共和国2022年10月号佳作集IIに掲載していただきました)