十月一日(土)
カミーノ巡礼三日目。今日は少し遅めの七時起床。外の物干し竿まで洗濯物を取り込みに行くと、全然乾いていなくてショックだった。しょうがないのでバックパックに吊るして歩きながら乾かす。
八時出発。このぐらいの時間だとさすがに外も明るい。
それにしても昨日の夜はもう限界だと感じていたのに、寝て起きたらかなり回復していたのでびっくりした。睡眠とでかい肉がもたらす効果はすごい。疲れすぎているせいで時々目が覚めてしまい、そんなに熟睡できたという感じもなかったのだが、それでも知らないうちに体が自力でリペアしてくれたみたいだ。これならサクサク歩ける。今日は十五キロ!
通りがかった町で巡礼者の像を見かけた。杖にホタテ貝をぶら下げているね。
霧が立ち込めていて、映画の『ミスト』みたいな雰囲気。
九時半。さすがに歩き始めると疲労の蓄積を感じる。ぼちぼちお腹が空いてきたので、次に大きな町に辿り着いたらご飯にしよう、という話に。ここでは荷物だけ下ろして十分程度休憩した。今日の目的地まであと十キロだ。
日が昇って晴れてきた!暑いので半袖になって歩く。洗濯物が乾きますように。地元の人とすれ違うと時たま「ブエン・カミーノ!(カミーノがんばれ)」と言ってもらえるのが嬉しかった。
十一時。大きめの街に到着。ここにならなんかありそう〜。
いい感じのバルがあったので、スパニッシュオムレツを頼んで食べた。層の間にマヨネーズカニカマみたいなやつが挟まっている。いっしょに注文したレモン風味のビールもめちゃくちゃ美味しくて飲みやすかった。キリスト教の聖地を目指して歩いているのに、道中でお酒を飲むなんて……という気持ちもあるけど、まあたまにはいいよね。
休んでいたら後から今朝の宿で別れた巡礼仲間がやってきて軽く挨拶。
急にお祭りが始まった。ものすごい人だかりができている。子供は柵に登りたがる生き物だなあ。
あまり長いこと休んでいると動きたくなくなってしまうので、適当なところで切り上げてまた歩き始める。今日はあと五キロ〜。
行く道すがら、たまたまたフリーマーケットが開催されていたので、ちょっとだけ立ち寄ってチーズケーキとチョコレートケーキを買った。明日の朝ご飯にするんじゃ!
それにしても……と思ったのが、大きな街をこうやってせこせこ歩いていると文明を知らない人って感じがしておもしろい。おもしろいし、微妙につらい。こんだけ交通網が発達してるんならバスに乗ったらええやん、という気持ちになるからだ。山道や小さな町を過ぎるときは全く考えてもみなかったので、これは新しい発見だった。でも、がんばる。
十三時、今日泊まるパンプローナに到着!
△Albergue Jesus y Maria
見るからにいい町。最後の気力を振り絞って目的のアルベルゲを探し出すと、チェックインして即ベッドに倒れ込んだ。もう無理、もう動けない……。
洗濯物は結局濡れたままだったので、シャワーに浴びたあとそのまま着て乾かすことにした。寒い。体力の限界ですぐには動けないのでとりあえず昼寝することにした。
十六時。町に到着する巡礼者が増えてきたのか、周りから聞こえる話し声が段々大きくなってきた。今日のアルベルゲは百人以上が宿泊できる仕様だ。そのため二段ベッド同士の間隔がちょっと狭いのだが、内装は教会っぽくてかっこいいし、宿泊費も一人十一ユーロ(約千五百円)と安い部類。私はここの雰囲気がとても気に入った。
△杖の先に付けることで防音になるキャップ
店が閉まる前に旅の必需品を買い足し。宿の近くにカミーノ巡礼者向けの店があり、そこで室内履きやミニサイズのシャンプーを入手した。他、杖やバックパックなど、巡礼に必要なものは一通りここで揃えることができる。
街を散策。
スペインといえばピンチョスという小皿料理が有名なので、それを食べながら一杯やろう!と夫に誘われて外食。ずいぶん酒飲みに優しい文化があるものだと思った。
帰りに明日の食料も手に入れた。これはたまたま見かけた菓子パン。日本のイメージこれか……。
カミーノショップで買った貝殻のネックレスを付けてうさたろも巡礼者に。うさぎ巡礼者、カミーノ史上初か?
アルベルゲに戻ってひっくり返っていたら、初日からちょくちょく話をしているイタリア人女性に「これからサルサ踊りに行くんだ」「来る?」と聞かれた。ありがたいけど行くわけがない。みんな元気だなあと思った。