十月四日(火)
カミーノ巡礼六日目。昨日の反省を活かして六時には起きた。今日はどの地点で休憩を取るかもなんとなく決めてある。
七時過ぎ、パンとココアで軽く朝食を済ませて出発。今日も二十キロぐらいだ。空の色がすごく綺麗。立ち止まり、空に向かって祈りを捧げている人もいた。私はクリスチャンではないけれど、そうしたくなる気持ちもわかる。
しばらく歩いていると、昨日から楽しみにしていた「ワインの泉」があった。左側の蛇口を捻るとタダでワインが出てくる。右側は水。
前回夫が通った時は枯れていたそうで、もしかしたら今回も……と思ったのだが、朝早かったからかちゃんと出た!
しかしコップなどは置いていないので手で受けて直飲み。テンション上がる〜。渋味のあるワインだった。
変わった木。
宿で朝ご飯を食べてきたからか、今日はいつもよりサクサク進める気がした。やっぱりちゃんとエネルギー補給をしてから動いたほうがいいね、と二人で話し合う。しかしこれまた難しい問題で、ちょうどよく手持ちの食料があればいいけど、どの町にも決まってちょうどいいマーケットがあるわけではないし、かといって出発してすぐカフェに立ち寄るのは出鼻をくじかれた気分になるし……「こうしたほうがいい」という理想はあっても、結局はその時々の状況によって色々だよね、という当たり前の結論に至った。
飛行機雲がバツ印になってる!ってはしゃいだ。空がどんどん明けてきて、ミルキーなやさしい色に。
坂を登って小高い丘の上に辿り着いた。道中ですれ違った地元のおじいちゃんが先に来て写真を撮っている。もう一度挨拶したら、今度はゴリゴリのスペイン語でめちゃくちゃ話しかけてきてちょっと面白かった。通じないかも、とかは考えないんだな。おそらく、「向こう側に着いたらコーヒーを飲むんだ!」とか「あの山の上はもっと綺麗だよ」みたいなことを教えてくれているんだろうなあとは思った。何を言っているか全然わからないはずなのに、なぜかなんとなくわかるのすごい。コミュニケーションって言葉だけじゃないんだ。夫もそう思ったのか普通に日本語で返事したりしていたけど、やっぱり通じるみたいだった。
九時。今日の目的地ロス・アルコスまであと十三キロ。良いペースだ。
ロス・アルコスの手前の町まで来た。ここから先は十二キロ以上何もないらしいので、一度荷物を下ろして休憩することに。オレンジジュースを飲みながらスナック菓子を食べて三十分ほどダラダラした。
後から昨日知り合ったブラジル人男性がやってきて、挨拶も早々に「これ、俺の靴じゃないんだよ!」と言う。詳しく聞いたらどうも別の人が間違って彼の靴を履いて行ってしまったらしい。今日行く町にも似たような規模・価格帯の宿があるから、おそらくそこで再会できるんじゃないかという見通しを立てつつ、早く見つかるようにみんなで祈った。ドミトリーに泊まっているとこういうこともあるから注意が必要だ。
水を汲んで再出発。
しまうま模様の道。だんだん暑くなってきた。いますぐ海に入ってもいいぐらいの気温だ。
大きな干草のタワー。
十一時。あと九キロ。私たちのペースだったらおそらくあと二時間ほどで到着する。
こんな感じの何もない田舎道がずっと続いた。上り坂はないか、あってもかなり緩やかで、いちばん歩いていて楽しいところだ。
十二時過ぎ、木陰でチョコレートを食べながら小休憩を挟んだ。ロス・アルコスの次の町まで行くという案がでかけたが、結局立ち消え。
あと四キロぐらい!
歩きやすい道だったのでつい無心でガツガツ進んでいたら、ふと振り返った時に夫が豆粒大の大きさになっていてびっくりした。思考と現実の距離感が具現化したのかと思った。
十三時。予定通りの時間に到着。
アルベルゲに行く途中で素敵なベーカリーがあったので、マルゲリータ二つと飲み物を買ってみたら十六ユーロ(約二千三百円)もした……。美味しい……けどさ……。先に値段を聞くべきだった。
シャワーを浴びた後はお昼寝!スペイン流に言えばシエスタってやつだね。早く着くとこういう良いことができるなあ。
夜はメニューピルグリムを食べた。お肉はステーキよりも煮込み料理の方が好きだ。二人で今日の振り返りをしたり、お互いへの感謝を伝えたりしながらゆっくりご飯を食べた。
デザートのアイスがこの形で出てきたのはちょっと面白い。