カミーノ 愛おしいものには毛糸カバーを

十月十八日(火)

 カミーノ巡礼二十日目。目が覚めるともう七時半だったので、三十分で支度して出かけた。最近なんだか起きるのが億劫だ。

 

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 外はもう明るい。昨日の時点では二十六キロ歩く予定だったが、相談して二十キロに変更することにした。元の目的の町にはベッド数が充分になく、だんだん今日の宿を確保できるかどうか不安になってきたからだ。行ってなかった場合はさらに六キロ追加で歩くことになり、それはさすがに現実的ではない。

 

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 今日はすっかり晴れた。これだけでかなり気分が違う。

 歩きながら近頃二人とも寝起きが悪い件について話して、「肉をもっと食べた方がいい」という結論に至った。タンパク質が足らねえんだ。

 

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 目の錯覚だと思うのだが、向こう側の木がやけにぼやけて見えた。

 

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 密集している部分がモヤモヤしているように感じる。木にフォーカスした写真だとわかりやすい。

 

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 九時半。七キロ歩いて最初の町に着いた。

 

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 よく見たら木の幹に毛糸のカバーが巻いてあった。明らかに手編みだ。振り返ってみるとあっちの木にもそっちの木にもしてある。お腹が冷えませんように、ということだろうか。

 

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 かわいい看板。ハートマークの落書きがいい感じだ。

 

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 子猫もいる。

 

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 お腹がペコペコだったのでバルで朝ご飯を食べた。トルティージャ(じゃがいも入りのオムレツ)が分厚くていい感じだ。


 後から来た巡礼仲間がチーズとハムを少し分けてくれて、それもすごく美味しかった。「近くにあるミニマーケットで買ったの」と教えてもらい、私たちもそこへ行ってみることに。この後十二キロ先まで町がないため、ピクニックの材料が欲しかった。

 

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 ここでとても親切なおじいちゃんが生ハムを塊からスライスして量り売りしてくれた。パンとチーズ、非常食用のチョコレートも買って再出発。

 

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 町を出ようとすると、やっぱり目につくすべての木にカバーが……!

 こういうことができるような人間になりたいね、と二人で話した。余裕か愛、あるいはその両方がないと出来ない芸当だ。

 

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 十一時。線を引いて描いたみたいな景色。

 

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 枯れ葉が敷き詰められた道。一歩を踏み締めるごとに鳴る音が嬉しかった。

 

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 やたら整然とした林。

 

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 前を歩いていた夫が急に立ち止まったので、つられて上の方を見たらトゲトゲした丸い実が生えていた。食べられるのかな?

 

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 十二時。しばらく歩いたところにちょうどいい休憩スペースがあった。疲れたのでちょっと座って行く。最初は一息つくだけのつもりが、しばらくいるうちに小腹が空いてきて、結局お昼ご飯を食べた。さっきおじいちゃんにスライスしてもらったハムと、おじいちゃんおすすめのチーズが美味しい。


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 一時間ぐらいしてからまた歩き始めた。あと七キロ。


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 珍しくクリーンな状態の看板があった。


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 あと三十分ぐらいで着くかなあ、と話していたら背後から猫の鳴き声が……。振り返って「あ、猫」と思った瞬間、すごい勢いでちいさな生き物が私の足元まですっ飛んできた。足に頭を擦り付けながらミャアミャア鳴いて空腹を訴えてくる。さすがにたまらない気持ちになって、余っていたパンの柔らかいところを与えた。元気に育ってほしい。

 

 やっぱり、猫の餌買って携帯しようかな……地域のルール的にどうなんだろうとは思うんだけど、リスを餌付けしてるおじさんがいるくらいだし……悩みます。


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 十四時。レリエゴスに到着。たいした歩いていないのに疲れた。


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 チェックインして、気がついたら寝てた。辛うじて風呂と洗濯は済ませてあったのでセーフ。いつの間にか出かけていた夫が夕飯の買い出しをしてきてくれた。

 

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 そしてまたボロネーゼを……本当にいつもありがとうございます。