リヨン とても豊かな何かの肉

十一月十八日(金)

 今日でパリとはお別れ。これからフランス第二の都市・リヨンに移動する。

 思えば一週間近くいたけど全然パリのことを知り尽くすことができなかった。ポンピドゥセンターをはじめとして、気になっていたけど行けなかった美術館・博物館の類は山ほどあるし、なんなら存在すら認知していない素晴らしい場所だってたくさんあるはずだ。また、物価が高いから節約しようということでほとんど外食をしなかったことも今になってみれば後悔のひとつだった。スーパーで売ってるチーズや生ハム、鴨肉のパテみたいなやつが普通に美味しかったから、別にそれだけでもいいんだけどね。旅費を負担してくれている夫自身がけっこう悔いていたので、もうちょっと贅沢したい気持ちを後押ししても良かったのかなと感じた。

 

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 九時。リヨン行きの高速バスに乗り込んだ。最後の最後で乗った電車が途中停止しまくって肝が冷えたけど、どうにか間に合ってくれてホッと一息。

 

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 今日は六時間揺られます。パリ市外へ出た後はひたすら何もない森や農地の傍を走り続けた。これが日本の東京発だったらそろそろ群馬県に到達してるな、というところまで来てもとにかくずっと草と木しかない。人の気配がない。フランスは思っていたよりも大きかった。

 

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 バス内の貼り紙。車内でハンバーガーとピザは禁止です、と書いてある。飲食を丸ごと禁じるのではなく食品を限定しているのがちょっとおもしろい。


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 十五時。途中何度か休憩を挟みつつリヨンに到着した。放り出されたペラーシュ駅のあたりは治安があまり良くないようで、これまでの人生で見たことがないぐらいにゴミが散乱していた。さらに駅前の通りにはロマの人々によるテント群がずらり……。あと、燃えて焦げたまま放置されてる自転車とかがあった。パリの治安が意外に良くて安心していたところだったから、これはちょっとショックだ。十八区のグットドール通りなんかより全然やばいものを感じる。

 ただ荒れているのは駅周辺だけのようで、少し離れると綺麗な住宅街が立ち並んでいた。女性も普通にひとり歩きしているし、スリにさえ気を付ければまあ大丈夫そうだ。たぶん。


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 ソーヌ川。この町ではソーヌとオーヌというふたつの川が寄り添い合うように流れていおり、その合流地点には合流博物館が立っている。嘘みたいな本当の話だ。


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 ゲストハウスにチェックインした。こちらは宿のゴリラ。久しぶりのドミトリー部屋でカミーノを思い出してしまい切なかった。

 

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 パリにいる間予定を詰め込んで動き回っていた疲れが出たのか、今日は久しぶりに夜まで昼寝した。起きてから夕飯を求めて外へ。川の傍を散歩して繁華街のほうを目指した。


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 入ったレストランに一人十六ユーロで食べられるディナーメニューがあったので頼んでみた。一皿目は何かの肉のテリーヌ。何かの肉って、何?という話だけど、メニューがフランス語でほとんど読めなかったんだよね。どうせどれを選んでもそれなりに美味しいはず……と思って運命に賭けてみたら本当に美味しかった。しかも何気に量が多い。あと、サラダにドレッシングがかかっていて地味にびっくりした。ヨーロッパに来てからだいたい野菜はオリーブオイルと酢、塩で食べるのが主流だったから。さすがフランスは細部までこだわるなあ。食に対する意識がおしゃれ。でも、ドレッシングにまでこだわるのがおしゃれって言うなら、もっといろんな種類を用意している日本の松屋とかのほうがおしゃれなのでは?それは違うか。


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 二皿目のソーセージも良かった。普通にナイフとフォークで一口分だけ切ろうとしたら皮が破れ、中から何かのモツ肉が溢れ出て来て困惑。こんな風にソーセージを食べるのは初めてだ。ホワイトソースもただクリーミーなだけではなく、マスタードと白ワインによるアクセントがあって美味しかった。うーむ。

 正直、フランスの食文化を舐めてたとしか言いようがない……。いくら美味しいとは言っても他の国と同じぐらいなもんだと思っていたらけっこう超えてきた。


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 デザートも七種類ぐらいある中から選べた。口頭で何があるか伝えられて、よく聞き取れないまま適当に選んだらクリームブリュレが当たってラッキー。


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 宿に帰るとロビーで地元のバンドがライブをしていた。二十三時までやるというのでちょっと見て行く。選曲が良く、聴いたことがなくても乗れる歌が多くてよかった。あとシンプルに演奏がめちゃくちゃうまい。ひさしぶりに夜遊びの雰囲気を楽しめて良かった。