さようなら、犬

なにもいらない

なにもいらないよ 今日は

食卓に薔薇なんか置くな

クリームチーズは食べたくない

赤いベレーもかぶりたくない

だいすきなあの子がやってきて

真冬のミルク 夏の金色を差し出しても

きっとぼくは追い返す


このままどんどん動けなくなって

このままどんどんバラけていって

あの山が燃えることだけ考えて

ぼくは・あたしは・忘れたい・だいたいのこと


カナリアという名前の色鉛筆

籠いっぱいのラベンダー

それは自転車

おじさん

振り子


ぼくはもうインク切れ

じゃあね、

犬みたいなやつ

 

(☆ココア共和国2022年11月号佳作集IIに掲載していただきました)