ようやく赤ちゃんのことを身近な存在に感じるようになってきた。
赤ちゃんについて、どのように感じていますか。 (複数回答可)
愛おしいと感じる・とても身近に感じる・ちょっとのことでおろおろする・腹立たしくいやになる・特別な気持ちがわかない
三週間前に提出した産後ケアの事前アンケート。ポジティブな回答には大抵丸がついたけど、唯一「(赤ちゃんを)とても身近に感じる」という表現だけはピンとこなかった。身近。身近ってなんだ。確かに私たちは家族だ。それどころかつい先日までは完全な一心同体だった。だが、いまは違う。いざ産まれてきてみると、赤ちゃんは想像してたよりもずっとちっちゃくて、フニャフニャで、そして何より未知の生き物だった。同じ人間であるはずなのに、いろんな部分が未発達すぎて、自分自身と仕様が違いすぎて、どう対処していいのかわからないことだらけ。生まれたばかりの頃なんかは特に日がな一日中寝てばかりいて、やることといえば授乳とおむつ替えぐらいなのに、それでも悩みは尽きなかった。
なにより恐ろしいのは、赤ちゃんが生き物としてかなり弱い存在でありながら、持っている力は驚くほど強いこと。こちらがどこまでの出力で体に触れていいか分からずオロオロしていると、向こうはお構いなしのパワーで反応を返してくる。だから最初はちょっと抱っこして持ち上げるのすら怖かった。頭では大丈夫だとわかっていても、なんだか落としちゃいそうな気がして。
赤ちゃんは大切な大切な壊れもの。 ちょっとでも目を離したら死んでしまいそう。 ちょっとでも何か間違えたら死んでしまいそう。ちょっとでも私が何かをしたら。うっかりを。
いっしょに住んで二十四時間体制でお世話しているわけだから、確かに物理的な距離はハンパなく近いのだが、何をするのにも恐れや躊躇いがあって精神的にはけっこう開きがあったように思う。愛おしさは当然感じるものの(生まれる前から世界でいちばんかわいかった。それは間違いない)、身近という言葉からは少し遠い。さすがに他人行儀というほどではないが。
まあでも、そのうちに慣れた。
産んだ直後は病室のトイレに一瞬入ることさえ怖かったが(扉を開けたまま用を足すべきか真剣に悩んだ)、最近では隣にいても平気で眠れるようになったし、短時間であれば泣いていても別に死にはしないな、とある程度割り切れるようになってきた。
また、そうやって肩の力を抜けるようになると体の回復も早いもので、以前より日中元気に起きていられる時間が増えたし、そのぶん赤ちゃんとたくさん遊んだり関わったりできるようになって、とてもいい。おかげで最近ではかなり自然体で赤ちゃんと付き合えるようになってきた。
というわけで、今日は親子三人揃って初のお出かけ。おい川!さかなちゃんだよ〜。
一ヶ月健診を終えてからずっと遊びに出かけたくてうずうずしていたのだけど、抱っこ紐の使い方をマスターするのに思いの外時間がかかって遅くなってしまった。でも、これからはもう大丈夫。
△さかなちゃんだよ〜
△ソースカツ丼だよ〜
半分は大人のリフレッシュが目的だったが、赤ちゃんも日の光を感じると気持ちいいのか目を細めてよく寝てくれた。外気浴はいい刺激になって生活リズムを整える助けにもなりそうだから、今後はたくさん外に連れて行ってあげたい。まだまだ落ち着かない日が続くけど、それでも少しずつ。こうやって段々三人で行動することが当たり前になって、我が子がもっと身近な存在になっていったら嬉しい。それが日常をかたちづくるということだと思う。
△赤ちゃんが聴くと泣き止むマツケンサンバってどれのことなんですか?
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そういえば、妊娠中に増えた体重は結局五キロしか落ちなかった……。まだ十キロも残ってるんですが。でも、これもゆっくり、少しずつなんとかしていけばいいなと思った。
私の中で出産は臨死体験に分類してもいいと思うほどの衝撃だったから、無理して元の姿に戻ろうとするのではなく、むしろ自分を新しく作り変える意識でやっていきたい。どのみち人間は一定の形で居続けることなどできないのだから。状況が変われば理想も夢も変わるし、変わっていい。少なくとも私は。