2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

他人の死

大切なひとが 何人か死んだ 街路樹の濃すぎる青を 蛇口から流れる水の不透明さを 旅客船設計図の精確さを 百合のように垂れ下がった老人の頭を わたしと同じ目線に立って わたしと同じだけの重さを持って そういうものを大切にしていたひとが この世から消え…

朝に遊ぶ

最寄駅のホームで電車が来るのを待っている最中、ふと、私にとって私の身体はオモチャだな、という気がした。目で見たこと、耳で聞いたこと、肌で感じたこと、その他すべての刺激を甘受し、解釈するために在る総合器官。血の通った肉体というよりも、剥き出…

鬼とひよこ豆

わたしの上司を ひとは 鬼と呼ぶ 本人の前では言わない かくれてこっそり そう呼ぶ わたしも あのひとに仕事を教えてもらったの それぞれにいいやり方があるってね ちょっとこわいけど 尊敬しているの そんなことをいいながら みんなどこかに隠れてしまう 怒…

みんな知っている

欲しいものを全部買った 魔よけのための鏡 知らないひとの夢日記 レースで編まれたコースター 丸ボタンがついている あずき色の冬物コート あの子にあげるリボンの髪飾り 財布がとても軽くなった おさつも小銭もどこかに消えた やつらはすばしっこくて 逃げ…

最近、馬になりてえな、と思うことが増えた。急に。 理由は単純で、かっこいいからだ。たくましくてしなやかな肉体に魅力を感じる。お尻から太ももにかけてのラインなんか、特に最高だ。四角い足首と、かたそうな蹄もいい。強い生き物だったらなんでも好きだ…

煙のおもいで

私にはおじいちゃんが二人いる。父方のおじいちゃんと母方のおじいちゃん。別の言い方をすれば、好きなおじいちゃんと嫌いなおじいちゃんだ。今日は嫌いなほうのおじいちゃんの話をする。 おじいちゃんはたいそう亭主関白な、ザ・昭和の男で、沸かした風呂に…