2023-01-01から1年間の記事一覧

PIKA PIKA(所感、また詩の目的するところについて)

金森さかなの第1作品集『PIKA PIKA』の通販ページを公開しました。 https://osakanamarket.stores.jp/items/65611421a625e86e7d373afa 全178ページ、送料別1200円。なかなか厚みのある1冊です。2020-2022年に詠んだ短歌や書いた詩を主に収録しています。 詳…

救われえぬもの、地球カバーを編む

秋だなあ。 明け方頃ふと目を覚ますと、外は土砂降りの雨だった。空気はひんやり冷たく、静かで、暗くて、なんだかありえないようなうつくしさが部屋中を満たしている。 その効果なのか、トイレから帰って二度寝するとそれはそれはきれいな夢をみた。細部ま…

春、途轍もなくでかい絵を描く

また人生が速くなってきた。やりたいことが山積してきた。仕事を辞めたくなってきた。 頭の中が取っ散らかりすぎていて、整理しようにもどこから手を付ければいいのかわからない。自分だけでは(時には夫に相談した上でも)判断の難しい部分もけっこうあり、…

どうせ美しい過去になる

「なぜなら、すべて神聖なものは夢や思い出と同じ要素から成立ち、時間や空間によってわれわれと隔てられているものが、現前していることの奇蹟だからです。しかもそれら三つは、いずれも手で触れることのできない点でも共通しています。手で触れることので…

うまくいけよ

ここ最近はけっこう混乱していた。 昨年の十一月末に長い新婚旅行から帰ってきて早二ヶ月。 帰国の数日前に大好きな祖母が亡くなり、しばらくは落ち着かない日々を送っていたが、四十九日が過ぎる頃にはそれなりに心の整理もついた。他の家族も傍目には安定…

退屈

2:54 カーテンはまだない 狭い台所で 誰とも心が通わない時間を待っていた 9階から見降ろす街は どこかに病院を宿している あちこち散らばる青い非常灯 白すぎる廊下の影 鼻を刺激するアルコールの匂い そういったものたちの羅列 こんなところに教会を産まな…

いつまでも夢にならないひとがいる 冬の入り口 つま先立ちで生きたい情動 濡れた砂浜が鏡みたいに反射して わたしの胸を あまく 突き刺す 果てはなかったの けっきょく辿り着いてしまう、海 買い手がつかないまま枯れた花を 窓しかない部屋に飾ってた 笑い声…

birth

生まれ変わったらあたし、歯医者になるの あなたの口に指を突っ込んで できるだけやさしくエナメル質に触れたい 生まれ変わったらあなた、ふかふかの毛布になってね そしたら素っ裸になって 年中その温もりだけ求めて過ごすから 生まれ変わらなくてもあたし…

さようなら、犬

なにもいらない なにもいらないよ 今日は 食卓に薔薇なんか置くな クリームチーズは食べたくない 赤いベレーもかぶりたくない だいすきなあの子がやってきて 真冬のミルク 夏の金色を差し出しても きっとぼくは追い返す このままどんどん動けなくなって この…

決して追いかけるな

次に喧嘩をしたら 新幹線に乗って大阪まで行けって あなたが言ったから さっそくわたしは背中を向けて いつもの駅を目指すことにしました キッチンでお静かにしている じゃがいも入りのバターチキンカレー 宝石みたいなぶどうのゼリー あなたに全部食べられ…