追いかけたい

あの頃は

病気の一環として人を好きでした

愛ではなかったとおもいます


だからチューペットが砕けた瞬間

あ と思って飛び降りました

騒然としてほしい教室

死んだあとの夕焼け

長い長い落下は 気持ちがよかった


あんなものを恋だと認識するぐらい

わたしの夏時計は狂っていたのでしょう


はじめての臨死体験

フランボワーズのソルベを添えて

水槽でベタが泳ぐ映像 赤い 青い また赤い


もう二度と接続できないページの

もう二度と読むことができない詩たち

ちゃんとするってどんなかんじ?


キスしたいぐらい鯉はかわいい


コップの底に残った梅のジャムごと

粉々にしてやりたくなるぐらい

強烈にあなたを覚えています

 

(☆ココア共和国2022年9月号傑作集Iに掲載していただきました)