いつまでも夢にならないひとがいる

冬の入り口

つま先立ちで生きたい情動

濡れた砂浜が鏡みたいに反射して

わたしの胸を あまく 突き刺す


果てはなかったの

けっきょく辿り着いてしまう、海


買い手がつかないまま枯れた花を

窓しかない部屋に飾ってた

笑い声 真っ赤だ、真っ赤だ

永遠に閉じない瘡蓋


それでもわたし

あなたを失ったあとより

あなたを知る前のほうが

ずっと さみしかった


この岬を歩いてきたんだね ほんとうは

断崖 肉体だけが自由だった

 

(☆ココア共和国2023年1月号傑作集Iに掲載していただきました)