2017.05~12 短歌

詠んだ順に32首

1.大正解!わたしの暮らしほろ酔いの昼はふらふら宇宙のはずれ

2.いちご味舌で転がし老人の語らい盗むと「いいやつから死ぬ」

3.果物の臍をやさしく掃除するジャムでも煮詰めて子猫と暮らせ

4.飼い犬にゆるしをえたときみ笑うずいぶんみやびにのろけやがって

5.つめたくてあまいなにかがすみずみに冷蔵されているといいな、ママ

6.あちこちに殺人現場がひそんでてこの守護霊もわりとヴィンテージ

7.シルバニアファミリーシリーズ・恵まれた家の赤ちゃん 肉まんみたい

8.薄膜がこの子を覆う夜明け前ブルー・グレーの壁は燃え尽き

9.あの子にもいまはかわいいひとがいて片手鍋の底とか引っ掻く

10.うさぎにはうさぎの倫理があるんだよ見たものすべてに齧りつくきみ

11.あの象はいったいなにをしたんですせめてペンキを黄色に変えて

12.土星とは縁を切ったよほんとだよ人参さんも言ってやってよ

13.わたしにはつつめないかもこの愛は足だけちょっとはみ出すのかも

14.幽霊にされた愛の告白をあつめて百年しりとりしよう

15.ねむいのはあなたのそばにいるせいね生きてるだけでバファリンなのね

16.服剥いだリカちゃん人形引き寄せてかわりにテーブル拭いてもらおう

17.生きている それってたぶん気のせいでぼくらは地獄で桃を売ってる

18.もう寝るねあなたがいくら増えようとわたしの海はぜんぜんピンク

19.ひしゃげてる自転車みたいな図になってはやくあなたとうたた寝したい

20.空港でその日暮らしのゆめをみてる口に詰めこむ東京バナナ

21.今日の店予約しといてくれたんだ 次はいっしょに遭難しようね

22.もう二度と会わないのかも いつの間にか買い替えられた獣のしっぽ

23.使用済みコンタクトレンズはりついて死んだくらげの赤ちゃんみたい

24.妹のあたまを齧る特売のいちごほどはもろくないけど

25.全身に麻酔打たれた象になる右の瞼に天使がくちづけ

26.さみしくてたまらないから占いがすきなひつじはパスタ食べます

27.くま柄のスカート着たい かわいいの わたしをまもって金のペディキュア

28.三年後開催される誕生会地球のひとをいっぱい呼ぼう

29.限りなくピンクは赤に近づいて生きてるだけで粒子になれる

30.あのひとがすきなバンドのラブ・ソング全部集めて東京燃やそ

31.昔からこういうふうにしたかった蛾という文字を青で丸して

32.オムライス返すときのやさしさでわたしに触れるな鳩が慄く