八月十一日(木)
今日でトルコともお別れ。十一時半イスタンブール発の長距離バスに乗ってブルガリアに陸路入国する予定だ。本当は夜行列車に乗る手もあったのだが、チケットが売り切れていてダメだった。
△バスターミナルの最寄駅内で飼われている猫
地下鉄に乗って最初に降りた大きなバスターミナルへ。駅を六角形に囲む形で大量のバス会社が軒を並べている。おもしろいのが、全部長距離移動のバスなのにどのオフィスにも呼び込みのおじさんがいることだ。フラッとここにやってきて「カッパドキア行きのバスあるよー」「ほな行こか」ってなること、そんなある?
最後のトルコ料理。夫婦で合わせて二百五十トルコリラぐらい余っていたので、できるだけ豪勢にやろう!という話だったが昨日の夕飯がまだ胃に残っていて結局スープしか飲めなかった。美味しい。
お昼を食べたりトイレに寄ったりしつつ、予定通りに無事バス乗車。
△来たぜブルガリア!
十五時。国境沿いにあるパスポートセンターで出入国手続きを済ませ、無事ブルガリアに突入。
終始雲の立体感がすごかった。
十八時半、ブルガリアの第二の都市・プロブディフに到着。それなりに都会のはずだが、人影も車通りもまばらでほどよく落ち着いた雰囲気だ。あと、猫を見かける頻度が一気に激減した。でも犬はトルコよりかわいい。
△ブルガリアの猫は数が少ない分一匹一匹がでかい(気がする)
ずっと観光続きだったので、このへんでしばらくのんびりしようと思う。
八月十二日(金)
ブルガリアはヨーロッパでいちばん物価が安い国と聞いていたのだが、戦争の影響などがあっていまはその限りでないらしく、ちょっと街に出た感じ外食は割と高くつくみたいだった。が、スーパーで食材を買って自炊するなら話は別。パンとチーズとサラミを切って、夫が簡単なお昼ご飯を用意してくれた。
△スーパー/トマトの多様性
どのみちここでの滞在の目的はchill。焦るような場面でもないし、しばらくは腰を落ち着けて詩でも書きながら過ごすことに。いろんなところに行っていろんなものを見る楽しみもわかるけど、宿でゆっくり日記をつけたり本を読んだらしている時間が結局いちばん好きだと思った。観光向けの性格ではないのかもしれない。刺激を求めるよりも、むしろ内省のために遠くへ行きたいと願っている。
十五日に古代ローマ時代の円形劇場で催される『カルメン』のチケットを夫が取ってくれたので、いまはひとまずそれが楽しみだ。
八月十三日(土)
昨日に引き続き夫が朝ご飯を作ってくれた。ハチミツを添えたヨーグルト、ネクタリン、そしてパン。本人は「こんなの作ったうちに入らないよ」と言うのだが、フルーツの皮を剥いて食器によそうだけでも手間はかかるし、そこに感じるありがたさは変わらない。
私は夫が旅先で用意してくれるご飯が好きで、去年青森でテント泊をしたときもガスバーナーで水を沸かしカップラーメンを食べさせてくれたのがすごく嬉しかった。だからブルガリアでようやく自炊のターンがまわってきてほんとうに浮き浮きしている。
今日は旧市街の方をお散歩。ヨーロッパの古い街並みが素晴らしい。
この奥からきれいな音楽が聴こえてきて、誘われるままにアーチを潜り抜けたらヴァイオリン弾きの女性が演奏をしていた。近くで結婚式があったらしい。
教会の敷地内で見かけたかわいいものたち。
△プロヴディフ地方民族学博物館
鍛治技術や農業、陶芸品等ブルガリアで栄えた様々な文化・民族風習にまつわる品を展示している。
一階に当時の市場の様子を描いた大きな絵が飾ってあったが、ざっと見たかんじいまの十倍は人がいた。
△Rose picking(薔薇摘みの絵)
ブルガリアは薔薇の産地としても有名。
糸巻き機の前でキャプションをうまく解読出来なかった夫が「なんで俺はこんなに長く生きてて羊毛の作り方も知らないんだよ!」と嘆いていて面白かった。知らない人のほうが多いだろう。
△足元までおしゃれ
ブルガリアの民族衣装。刺繍の細やかさがうつくしい。
祭りの時に使われていた衣装らしいのだが、ちょっと怖い。ナマハゲ的な感じなんだろうか。
小さいけれどいい博物館だった。建物自体も元は古い商人の屋敷らしく、雰囲気がある。
旧市街を見渡せる小高い丘。オレンジ色の屋根の家々がかわいい。その辺に腰掛けてのんびりしながらおやつとして持ってきたバナナを二人で食べた。
お腹が空いてきたので街の中心まで行ってお昼ご飯。でかいハンバーガーとでかい猫。親切で笑顔の素敵なお兄さんがひとりで切り盛りしていた。
△プロブディフの円形競技場
座ってもいいみたいで休憩しているひとがちらほらいた。
競技場の歴史をまとめた3Dシネマが観れるとのことだったので試しにチケットを買ってみた。字幕は当然英語なのでちゃんと内容を理解できたか微妙なところだが、ここに改修工事が入ったのはけっこう最近のことらしい(八年ぐらい前)、というのはわかった。だからあんな自由に座れるんだな。
あとから夫に教えてもらって、遺跡が発掘されたのは百年ぐらい前だということや、その時点ですでに周辺の街が出来上がっていてどうすることもできなかったこと、元々建てられたのはローマ時代だったことなどを知った。
街を探索。
郵便局らしき建物の壁。旧ソ連オタクの夫はこれを見て「物凄く共産党時代の名残を感じる」といってはしゃいでいた。
(※ブルガリアは旧ソ連国ではない。ただ旧ブルガリア共産党時代を経ているので似たにおいを感じるとのこと)
大きな公園。雨雲が近づいている影響もあって涼しいし過ごしやすかった。ベンチでウトウトしながら「ひょっとしたら家なんてないほうが清潔で良いのかも」と思うぐらい。
突如現れた桃太郎像。私も昨日知ったのだが、プロブディフは岡山県岡山市の姉妹都市なんだそう。今年でちょうど五十周年だとか。地元の人がこの像をどう思ってるのか気になる。
別件で熊もいた。穏やかで良い街だ。