十月十七日(月)
カミーノ巡礼十九日目。朝から雨だった。というか、今日からしばらくの間ずっと天気が悪いらしい。
八時。うさたろにはビニール袋をかぶせ、さらにその上からバッグパックごとすっぽり入る雨ガッパを着て出発。悪天候で道のりが険しくなることを覚悟してか、この時間に宿に残っている人はほとんどいなかった。みんな朝早い。今日は二十五キロ。
道に迷ってぬかるんだ農道を歩いたりしつつ、無事大きな通りに合流できた。曇っていて分かりにくいがいつの間にか太陽も出ている。
九時半。小さな町に到着。まだ五キロぐらいしか歩いていないのにかなり疲れた。やっぱり、雨が降っているとそれだけで体力を消耗するみたいだ。カッパを着ていても結局膝から下は濡れるし、眼鏡に水滴が付くせいで視界は最悪、テンションだって上がらない。あと、朝から何も食べてなくてお腹が空いていたのも良くなかったと思う。
町唯一のバルが定休日で開いていなかったため、適当なベンチに座って持っていたリンゴを齧った。
とはいえなんだかんだで雨は止んだ。ところによっては晴れ間も見える。
二、三キロ先にまた町があるので、そこでバルを見つけて改めて休もうという話に。
まあなんて大きなチョコクロワッサン。
町に着いてすぐいい感じのバルがあって救われた。急速にエネルギーが補填されていくのを感じる。
ホッと一息ついていたら昨夜同じテーブルに着いて食事した台湾人の男性がやってきて、しばらくいっしょに過ごした。この人は私の倍ぐらいの年齢なのに、すごくチャーミングなオーラを出している。涙をポロポロ流すジェスチャーと共に「仲良くなった友達が何人かいたんだけど、歩くペースが違うから結局離れちゃったんだ」みたいな話をしていて、温かく友好的な人柄を感じた。
彼の言う通り、せっかく仲良くなっても会わなくなってしまうことはよくあるので、一回一回の出会いを大切にしたいと思った。
再出発するとき、ふと見たら店のご主人が野良猫に余った食べ物を与えていた。二匹ともまだ子猫だ。
最近車道沿いを歩くことが多いので、たまに脇道にそれるとなんだか嬉しい。
△ "LA VIRGEN DEL PUENTE" ERMITA
気になる橋と庵を見つけた。あとで調べたら元は巡礼者のための病院だったらしい。扉には鍵がかかっていて中には入れなかった。
初日に到達したロンセスバリュスとサンティアゴ・デ・コンポステーラのちょうど中間に建てられたモニュメント。巡礼の旅もここからは後半戦だ。
「CASTILLA Y LEÓN」を「MICHAEL JACKSON」に変えていったやつがいる。
※CASTILLA Y LEÓN(カスティーリャ・イ・レオン)…現在地の州の名前。
十二時。大きな町に着いたので、ここでもう一度休憩していくことにした。お腹が空いているからと軽い気持ちでパスタを頼んだらものすごい量が出てきてしまい、爆笑。夫がおつまみとして頼んだポテトとソーセージの炒め物も想像の二倍のサイズだった。
十三時半。苦しいぐらいお腹がいっぱいになってしまったので、少し落ち着くまで待ってから店を出た。歩き始めた途端に雨が降り始める。
しばらくしたらまた止んでくれた。
途中で知り合いとすれ違ったので、「今日はどこまで行くの?」と聞いてみると「特に決めてない。とりあえず五キロ先の町でアルベルゲを訪ねてみて、満室だったらもう少し歩く」と言われた。そういうやり方もありだ。
十四時半。ようやく晴れた!
分岐路があったので、今日泊まる予定のベルシアノス・デル・レアル・カミーノへ行くほうの道を選んで進む。
微妙な天気が続くと晴れのありがたさがわかるなあという話をした。ぜんぶに触りたくなるぐらい木の葉のゆらめきが綺麗。
十五時。町の入り口に到着。今日はなんだか疲れた。
宿にチェックインしてお風呂と洗濯を済ませてから外に出ると、相変わらず外は気持ちのいい天気だった。それ以降はわからないが、明日も一応晴れるらしい。よかった……。
そう思ってラウンジでのんびりしていたら、さっきの台湾人男性が「rainy!rainy!rainy!」と言いながら走ってきた!
びっくりして外を見みると土砂降りの雨。三人で慌てて裏庭まで走って洗濯物を取り込んだのがけっこう楽しかった。あと一歩遅かったら大変なことになっていたので、教えてくれて感謝だ。
巡礼路の高低差を表した図が宿の壁に飾ってあった。初日に越えたピレネー山脈のあたりがエグい。しかしこうして見ると後半にも同じぐらいきつい山が控えていることがわかる。
小腹が空いていたので、アルベルゲ併設のバルでサンドイッチを食べた。いっしょに頼んだサングリアが美味しい。今日はもう寝るだけだ。明日も楽しい一日でありますように。