天国

 お金も職もないのに蟹を食べてしまうような人間になりたい。自分の器以上の幸福を享受しながら生きること。誰にでもその権利があるのだということをもっと深く、考えるよりも先に実体験として知りたい。私にはまだまだ難しい。

 最近よく東京へ遊びに行く。どこにいても居心地がよく、毎回帰りたくないと思う。とはいえ移り住みたいというのとはまた違う。どちらかというと居着きたい。どこにも明確な住居を構えないまま、永遠によそ者として知らない町をふらふらしていたいのだ。誰の目からみても単なる背景の一部としてしか捉えられることがなく、本当に存在しているのかいないのかもよくわからないけれど、とりあえず幸福感だけはすごくあって、この世が好きすぎるあまり成仏できなかった幽霊みたいな、そんなきもちにずっと浸っていられたらなあ。

 仕事があるので帰る。