おとむらい

 SPANK HAPPYの『普通の恋』をひさびさに聴いている。10代の頃に出会って以来何百回とリピートしてきた名曲だが、やはり、いつ耳にしてみても心地いい。甘いのに酔ってはいなくて、でもちょっとだけ眠たい、みたいな雰囲気の音楽と、そこへ乗っけられた、懺悔のような祈りのような言葉たち。

 

 上手く言えないけれど、これは恋愛のうた、ではないと思う。どちらかといえば暮らしのうたであり、生活のうたである。だからこそ好き。

 
 
 彼氏と自然消滅した。というか、こっちの気持ちが勝手に消滅してしまった。
 向こうの気持ちがいまどうなっているのかはわからない。けど、とりあえずここ2〜3日はなんの音沙汰もなし。次いつ会うかも特に決まっていない。
 
 彼氏はもともと口下手なほうというか、あんまり思っていることを表に出したりしないタイプだから、連絡がないイコール気持ちもない、と断定するのは早計な気もしつつ。
 
 でも、なんか、もういいかなあって。
 
 いや、いいかなあじゃなくて本人に気持ちを確認するなり問い詰めるなりしろよって話なんですが。
 
 私はわりと積極的に動き回ったり相手に働きかけたりするのが好きなほうで、だから今回も自分から告白したし、デートに誘ったりもしたんだけど、それがずっとってなると心が折れてくるっていうか。なんかあんまりにも返ってくる反応が薄いとやる気なくす。
 彼氏みたいな男の子を好きになったのって一度や二度じゃないし、単にシャイなのを情がないって捉えられるとこの手のひとは困っちゃうってこともよくわかるんだけど、うーん。
 なんかそれにしたってきみ自己表現さぼりすぎとちゃう?って気持ちにどうしてもなるし、だからといって「私のことどう思ってるのか言ってよ」って喚くのもなんかいや。
 
 積極的だからといって自分に自信があるわけではないので、何の根拠もなしに相手の好意を確信し続ける、ってのはなかなか難しいものがある。けど、だからといって相手に行動を変えてもらおうとするのはどうかな、と思ってしまうのが私で。無理してまで人と付き合うって考え方が私にはわからないし、わからないから相手にも強要したくない。
 
 ってなると、もう別に自然消滅でもかまわないかなって。嫌いになったわけじゃないけど。というかむしろまだちゃんと好きなんだけど。
 
 
 とかなんとかごちゃごちゃ考えてるときに、職場の人から「あなたはもう結婚してるの?」って聞かれて完全に心が死んだ。
 してないです、って答えたら「もうしてるかと思った」ですって。失礼な。いや、失礼なのかな?
 
 顔が幸福そうにまんまるとしているせいか、「ひとりの人と長く付き合ってそう」「結婚早そう」「いい奥さんになりそうだね」などの言葉をかけられることが多いんだけど、正直、全部地雷ワードだ。
 
 実際はこんなに普通の恋愛がわからなくて苦しんでるのに、と思ってしまってつらくなるから。
 
 
 「普通の恋」なんてものは集団幻想の一種で、ほんとはどこにも存在しないんだろうなあと思ったりもする。
 
 けど結局、私以外のみんなはなんだかんだ長く付き合ってる恋人がいたり、当たり前のように結婚して子供産んだりしてるわけじゃないですか。
 
 正解はないのかもしれないけれど、正解に近いやり方っていうのは無数に存在しているはずで、そのうちのひとつでさえ探り当てることが出来ない私はちょっとおかしい。というか、おかしい気がする。してしまう。
 
 一生結婚できないんだろうなあとか、私のことをいちばんにしてくれる人なんて永遠に現れないんだろうなあとか、そういうことを思うたびにほんのり絶望する。
 別にそういう人生があったっていいじゃんって思えたら楽なんだろうけど。でもやっぱり、「普通」を諦めきるのって簡単なことじゃない。
 
 
 普通とか普通じゃないとかにこだわりすぎて、具体的な個人と向き合いきれなくなってしまうのが実はいちばんの問題なのかもな。
 
 ってこれ書いてて思った。でもそこからどうしたらいいのかはわからない。着地点見失ったのでこの話はいったん終わりにします。