十月二十三日(日)
カミーノ巡礼二十五日目。今回泊まった宿は七時で一律客を起こすことになっているらしく、朝の挨拶と共に時間で電気が点いた。同じ部屋にいるたち人がどのぐらい起きているのか、明かりをつけるのに適した時間帯かどうか、お互い気を遣いながら出発の準備をするのが常なので、オスピタレロ側で点灯時間を決めてくれるのはまあまあありがたい。
起きて前日の雨でずぶ濡れになっていたジーパンを履くと、しっかり湿ったままだった。歩いているうちに乾くことを期待して我慢する。
八時。宿の前にいた巡礼者像とスリーショットを撮って出発。今日は二十キロしか歩かないので心に余裕があった。
奥に見えるのがアストルガのかっこいい市役所。
本格的に歩き出す前に町の外れで朝ご飯を食べた。外が寒すぎるので日が昇るまで一休み。
パウンドケーキを頼んだらオムレツもおまけでつけてくれた。中が半熟気味で美味しい。スペインの飲食店はおまけ率が高くて太っ腹だなあと思った。
ぼちぼち外が明るくなってきたので店を出でみたら雨が……。最初は小雨だったのがだんだん風が強くなってきて最終的にはけっこう酷いことになった。つらくてウケる。暖房のおかげで乾きつつあったジーパンがまたもやびしょ濡れに。
しかし遠くの方は晴れている。案外すぐ止むのではないかと希望的観測を立てつつ歩いていたら本当に十分ぐらいで止んだ。
虹も出た!
嬉しくてテンション爆上がり。リアルサウナだなと思った。
道の先にもまた別の虹が見える。こんなに晴れた空は久しぶりだ。
木も嬉しそうにそよいでる。
しかし右手側の空はけっこう怪しい。時間と共に雨雲が動いてまた降り出す可能性もあるので、その辺は覚悟しておこう、と二人で話した。
十時半。最初の町に到着。だんだん暑くなってきた。公園に立ち寄って水を汲むついでにウルトラライトダウンを脱ぐ。
二人ともまだまだ行けるテンションだったので、ここでは休憩せずに先へ進むことにした。
雨が降っていないだけで本当にいい気分。昨日三十キロ歩いたことで勢いがついているのもあり、今日はいくら歩いてもぜんぜん疲れなかった。いい感じにテンションが上がっている。
十一時半。残り七キロのところでようやく休憩。途中、窓から差し込む光が一気に明るくなったのを感じた。三十分ぐらい休んでから再出発。
十三時。あと一時間もしないで今日の町に着く。せっかくだし追加で五キロ歩こうかという話が出た。体力的には余裕があるため、このまま晴れてくれるなら先に進みたいところだが、予報では十五時から雨が降るらしくちょっと迷う。
久しぶりの凸凹道。歩きにくいのになぜか嬉しい。
十四時ちょっと前、元々の目的地であるラバナル・デル・カミーノに着いた。が、ここから先へ進むべきかどうかについてまだ結論が出ていない。雲行きが怪しくなってきてはいるものの、雨が降っているわけではないし、どうせ明日も悪天候なら最後の一、ニ時間雨ぐらいずぶ濡れになって歩くのもありだ。
どうしよう?どっちでもいいんだよな、と悩んだ末、ジャンケンで決めることにした。私が勝ったらここに泊まる、夫が買ったら次の街を目指す。
結果、私の勝ちだった。夫とジャンケンして負けたことがあんまりない。どっちでもいいとは言いつつ、内心、「昨日頑張ったんだし、今日はもういいよね」という気持ちがけっこうあったのでホッとした。
十五時。お昼ご飯を食べ損ねてお腹が空いていたので、早めにピルグリムメニューを食べた。一皿目のラザニアも二皿目のポークステーキも美味しい。
今日のプリンは固め。卵がしっかり感じられるオールドスクールな味だった。
宿に戻った後はベッドの上で本を読んだりしながらのんびり過ごす。しばらくすると屋根を叩く雨音が聞こえてきて、やっぱり今日はここで泊まることにして正解だったなと思った。一日を気持ち良く終えることができて嬉しい。明日もまたがんばる。