ホラー漫画のヒロインみたいに

 なるんだったら絶対、ホラー漫画のヒロインがいい。例えるならば、窓際の一番後ろの席、憂いを湛えた表情で、いつもひとり本を読んでいる憧れのあの子。長い黒髪が風にゆれる様子は、どこか植物のように可憐で。百合のように白い肌は太陽の光を浴びてますます青く透き通る。そんなうつくしい少女になって、サイコな力に目覚めてみたり、見知らぬ男のひとに命を狙われてみたりしてみたいものです。なーんて、この歳になってまで言っていていいことではないんですけれど。

 別に、少年漫画や少女漫画がきらいなわけじゃありません。ただ、少年漫画や少女漫画のヒロインには憧れないというだけの話で。

 仲間のことを第一に考え、世界のために一生懸命戦っている女の子や、誰かの笑顔を守るためためにアイドルを目指している女の子。あるいは、ごくごく平凡な、でもそれゆえにとてつもない尊さを秘めた女の子。みんなすてきだとは思うけれど、私にはいまいち引きが弱いように感じてしまいます。ただ明るく溌剌としているだけでは見ていて退屈だし、純真なのも悪くはないけれど、そればかりじゃちょっと刺激がたりない。それになにより、自分の容姿が美しいことや、異性からの好意に全く気付けないような鈍感な感性の持ち主では、きっと、おしゃれをしてみてもそんなに楽しくないだろうなあとか考えてしまうのです。私はおしゃれが好きなので、それでは困ります。でも、少年漫画や少女漫画のヒロインになれるのって、決まってそういう子じゃありませんか。

 どうせ女の子として生まれてくるのであれば、胸いっぱいにそのうつくしさを誇っているか、逆に、死にたくなるほどのコンプレックスでまみれているかのどちらかでありたい。

 そんなふうに考えてしまう私は、たぶん、というか絶対に、メジャーな雑誌の中ではうまくヒロイン業をやっていけないと思うのです。だからお願いします、神さま。いまからでもいい、私をホラー漫画のヒロインにしてください。私は学園一のイケメンに迫られるより、冴えない男の子たちの憧れでいるほうが好きなのです。

追伸:少女漫画でも岡崎京子原作ならオッケーです。もうかなり抜群に超絶オッケーです。でもあれってそもそも少女漫画に分類してよいのでしょうか。