『君は永遠にそいつらより若い』を観た

※ネタバレあり。原作未読。

 

 

 

 

・ホミネが残したアンケート用紙の落書きに、イノギが勝手に色を塗ったのがよかった。人間の思い出や記憶というのはずっと形を変えないままそこに在り続けるわけではなく、その断片に偶然触れた他人の手によって次々新しい意味合いを加えられていくものなんだろうなあ、と思ったし、そういう示唆を感じた。イノギとホリガイの間にあった心の交流にもそういった一面が含まれていたように思う。


・「そのときそこにいれなかったことが悔しい」で繋がっていく関係が切なくて、でもよかった。他人が持つ傷に引き寄せられる感覚は自分も身に覚えがある。ラストの不法侵入はちょっと吃驚したけど、これ以上「悔しい」思いをしないためにも今苦しんでる子供を救いたかったんだろうなあと思って納得した。


・処女であることに関して「人の人生に介入できない」「自分には欠陥がある」と吐露するホリガイを見て、若い頃の自分を思い出した。二十三、四歳ぐらいまでまったく同じことを考えながら生きていたし、実際処女だったので。本人からしたらかなり本気で思っていることなんだけど、こうして客観的に見てみると、欠けてるとか、普通じゃないとか、そういう話でもなかったんだろうなあと救われた心地がした。それに、ホリガイだって童貞で悩んでる後輩には「まだ二十歳じゃん」って言えたのにね。きっとみんな、自分のことだとわからなくなってしまうんだろう。


・ホリガイとイノギの性行為に関しては正気唐突さを感じた。でも、冷静になってみるとそこまでわからない展開でもない。私はおそらく同性との性行為にそこまで抵抗がないほうなのけど、その感覚をまんま映像にするとこれだなあ。私の中で心理的な親密度と身体的な親密度はかなり深く関係し合っており、「心が親しさを感じる相手と肌で触れ合う/触れ合いたい」という感覚はかなり自然なものなので…。性欲や性嗜好に先行する形で「その感覚」があるため、「気づかれないようにがんばっていたこと」を直接打ち明けたほどの相手であれば、たとえそれが同性であっても性行為に至ってそんなにおかしくはないなあと。まあそういうの関係なく単純にイノギがホリガイのことを好きだったとかそういう話なのかもしれないけど…。でもやっぱりあれは恋愛とかっていうより、二人の親密さの天辺を象徴するような行為だったような気がした。

 

・「ホリガイ、眉毛黒かったね」と一緒に観に行ったひとと話した。就活終わったし、とりあえず髪だけ派手な色にしてみたけど、服装とかは別に今までのままで、女っ気もゼロだし、いっつもジーンズにスニーカーだし、自虐的な姿勢や気持ちは抜けないし、その反面、計算されつくしたかわいい女の子をみると安心する、そんなホリガイが好きだ、と思った。

 

・「とっ散らかったことしか言えない人間なんですよ、自分ってやつは」と、言うところまで語順が逆になっちゃうのもよかったね。