十一月二十六日(金)
今日は特に何もしなかった。九時に目が覚めて、そこからまたしばらく布団の上でダラダラ。恋人といっしょに「ムーミンキャラクター診断」とかやった。結果は私がムーミンママ、恋人はニョロニョロ。恋人が「スナフキンがよかった!」と言ってるのを見て、癒しを無で薄めたような感情を抱いた。
昼ご飯として食べた十五個三百円のジャンボたこ焼き。ふわふわで美味しい。
初日に行ったたこ焼き屋さんが五個で五百円だったんだけど、それで「安い〜」とかはしゃいでたのなんだったんだろうな。今思うと完全に錯覚だった。でもさすがにこれは安すぎ。どうやって採算取ってるのか心配になる。
昨日の疲れもあってか、食べた後はまたひたすら眠った。十五時ぐらいにようやく「やるか……」という気持ちになってきて身支度を始める。恋人は「ちょっと昼飯食べてくるわ」と言って出ていったきりなかなか帰ってこない。
まあだったらひとりで出かけるか、と宿を出ようとしたところ、マンションのエントランスで偶然恋人に遭遇。相変わらずタイミングがいい。話を聞いてみると、一軒だけのつもりで入ったお店に数日前飲み屋で仲良くなったお兄さんたちがいて、今までいっしょにハシゴ酒してたらしい。
私が「初日に通りかかって気になってた喫茶店に行こうと思うんだよね」と話すと「ちょうどシメに珈琲飲みたかったんだよ」と言うので流れでいっしょに行くことになった。
というわけで通天閣の真下にある『喫茶 ドレミ』へ。
珈琲もチョコレートパフェも美味しかった。特にパフェはアイスクリーム含有量がすごい。下のほうに角切りの林檎が入ってるのも嬉しかった。フルーツ盛り沢山で得した気分だ。
写真を撮ろうとすると酔っ払いが「俺とパフェを撮ってくれよう」と言ってスライディングしてくるのが嬉しかった。
メニュー表もかわいい。レトロな雰囲気の中ここだけがピカピカで、リニューアル感があってよかった。
今日はこんなところで終わり。
十一月二十七日(土)
旅もいよいよ終盤。正直なところを言うと、実はものすごく家が恋しい。家の布団で寝て、家で作ったご飯を食べ、家の周りを散歩したい。こっちに来る前は「十日近くもずっと大阪にいたら帰りたくなくなっちゃうんじゃないか?」なんて思っていたのに、いざとなればやっぱり終わりが欲しくなる。
昨日も行った『喫茶 ドレミ』へ。モーニングのBセットを頼んだ。
天王寺公園の方まで散歩。いい感じの芝生を見つけたので、しばらくそこで腰を休めることに。寒いので背中合わせになっておしくらまんじゅうしながら本を読む。
空が綺麗。光が強すぎて字がよく見えない。
お腹が空いてきたので新世界のほうへ戻ってホルモン焼きそばを食べた。このお店、いろんなひとが美味しいって言ってて気になってたんだよね、と恋人。実際に食べてみると、大阪特有の甘口焼きそばにホルモンのマイルドな獣感がマッチして確かにめちゃくちゃ美味しい。レモンチューハイもいっしょに頂いて、程よく酔いが回ってきたところでいったん帰宅。昼寝。
こうなってくると最早旅というよりは家以外の場所で日常生活を送っているような感覚だ。大阪は食べ物がなんでも美味しくて、見どころも多く、刺激的な街だけど、ずっと居続ければやっぱり心も体も土地の空気に馴染んでくる。人間には順応性があるから、同じ場所に長期滞在していて高いテンションをキープし続けるのは難しいのだと思う。厳密に考えればまだ行けてない場所や食べてないものはたくさんあるのだが、必ずやっておきたかったことはだいたい済ませたし、お互いになんとなくもういいかなあ、という雰囲気だ。もしあと一週間暇があったらそろそろ次の街へ移動している頃合いだね、という話を二人でした。
☆
夜、恋人がずっと行きたがっていた西成のジャズバー『ドナリー』へ。私自身は全くジャズに明るくないのだが、恋人が好きなので家の中ではよく聴く。そのぐらいの距離感でいるのがちょうどいいな、とも思っている。
ひさびさに生の演奏を聞けるということもあって結構ワクワクしていたのだが、これは本当に行って正解だった。当然知らない曲ばかりだったのだが、明るく大胆な選曲が多く、聴いていると自然に体が動く。小さい箱ならではの演者との距離感もよかった。
締めに新世界でかすうどんを食べて今日はおしまい。はじめて口にしたのだが、うどんなのにいい意味で油っぽく、ジャンク感があるのが新鮮だった。好き嫌いはあるかもしれないけどハマると癖になりそうな味。
帰り道、日頃「まだ夏だと思ってる」と主張してやまない恋人があまりの寒さに「もう冬だな〜」と口走った。すかさず突っ込みを入れると、慌てて「冬なんて言ってない!これはめちゃくちゃ寒い夏だよ!」なんて言い訳をするもんだからおもしろくて仕方がない。もう冬だよ。