カミーノ 貝殻を手に入れるまで

九月二十七日(火)

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△サブザックに詰め込まれてまるでおくるみのようなうさたろ


 クラクフの宿をチェックアウトした。一週間近くいて、さすがに街に愛着が湧いてきていたところだったので少し寂しい。しかも今日に限って気持ちが良いぐらいの秋晴れだった。滞在中はずっと天気が悪かったのに、どういうこと……?

 

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クラクフ・バリツェ空港


 いよいよ明日からカミーノの巡礼路を歩き始めるので、今日はそれに備えてフランスのボルドー・メリニャック空港まで移動する。途中、パン屋さんに立ち寄ってお昼ご飯を買ったりしつつ、十一時過ぎにはクラクフ・バリツェ空港に到着した。

 

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 十三時。出国審査完了。なんて質問されたのか微妙にわからないまま適当に答えてしまったけど、無事通れたのでよかった……。陸路出入国のゆるい雰囲気に慣れていたので少し緊張した。

 

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 搭乗開始。今回はLCC(格安航空会社)を利用した。夫には散々「LCCに期待しないで!ほんと何もないから!ただ飛ぶだけだから!」と言われたが、乗り慣れてない身からすればやっぱりどんな飛行機でも嬉しい&楽しい。夫があまりにもLCCネガキャンをするので、「酔う?」と聞いたら「さすがにそれはない」と笑われた。

 

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 まさかのお誕生日席だった。目の前にCAさん用の予備席がついており、離陸時にはきれいなお姉さんと向かい合う形になってドキドキ。いつも以上に足をしっかり閉じて座った。

 

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 ポーランドさよなら〜。

 

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 二時間ぐらいで乗り継ぎのロンドン・スタンステッド空港に着いた。寝ていたらあっという間だ。

 

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 これがイギリスの空気か〜。

 次のフライトまで四時間ほど時間が空くので、その辺に座ってポンチキを食べたりして過ごした。ポーランド料理、もっと食べておけばよかった……。

 

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 十九時二十分、フランス行きの飛行機に搭乗。

 荷物検査の際にけっこう大きめの喧嘩をしてしまい、一時はどうなるかと思った。つまらないことでイライラしたらダメですね。無事仲直りできて良かった。

 

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 夜景が綺麗。

 飛行機は夜乗るほうが好きだなあと思った。この後の睡眠のことを考慮に入れないのであればだけど……。

 

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 うさたろも夜のフライトを満喫。LCCだから飲み物が別料金だった。ホットココア美味しい。なぜ飛行機でする飲食はこんなに美味しく感じるのか……。

 

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△嘘のインスタ映えスポット


 二十二時半、ボルドー空港に到着。フランスは温かいな、と着いた瞬間に思った。同じヨーロッパでもだいぶ気温差がある。

 

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 殺風景でちょっと病院みたいな雰囲気だ。今日はここで一晩明かす。似た目的で人が集っているエリアを見つけて、適当な椅子に陣取った。野宿も下がカーペットだったら全然いいのだが、こういう固くて冷たい椅子が相手だとちょっとしんどい。

 ずっと移動で疲れていたので、顔を洗って歯を磨くとすぐ寝袋にくるまって眠った。


九月二十八日(水)

 五時前には目が覚めた。本当はもっと寝ていても良かったのだが、変に意識が覚醒してしまったのでもうこのまま起きていることにする。身支度をしようと化粧ポーチを取り出したら日焼け止めの蓋が開いていて、中が悲惨なことになっていた。寝不足の時ってこういうことがあってもなぜかイライラしたりせず妙に冷静な気持ちで淡々と対処できる。不思議だ。

 

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 夫はまだ寝ているみたいだったのでひとりでその辺を散歩したりして過ごした。

 

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 六時半頃。夫も目を覚ましたのでぼちぼち荷造りを始める。今まで街歩き用のサブザックに入れていた細々した物を全部バックパックに詰め直し。うさたろは潰れないよう横に吊るした。

 

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 もう七時なのに外は真っ暗だった。しかも雨が降っている。

 カミーノのスタート地点であるサン・ジャン・ピエ・ド・ポーに向かうため、まずは中継地のバイヨンヌという街に行く。八時半にボルドー近郊から出る高速バスを予約しているので、ひとまず街のバスに乗ってステーションへ。

 

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 八時半。徐々に空が明るくなってきた。うっかり逆方向のバスに乗ってしまうというアクシデントがあり、一時は相当焦ったものの、夫の尽力と様々な幸運によって無事目的地に辿り着くことができた。が、そしたら今度は高速バスが時間通りに来ない。遅延しているのか、ストライキか、はたまたバス会社が倒産でもしたのか……様々な可能性に思いを馳せせつつ、待つこと十分、二十分、三十分……来る気配なし!

 他にも同じバスを待っている人がいたので、乗り遅れたとか場所が違うとかではないようなのだが、それにしても寒いよ〜。ジャケットの下にウルトラライトダウンを着込み、テス以来の完全防備でバスを待った。

 

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 九時四十分。結局一時間二十分遅れでバスに乗車した。もう来ないのかと思っていたので、もはや来てくれただけありがたい。

 

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 バスの窓からボルドーの葡萄畑を見ることができた。ここからワインが出来るのね。

 

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 十二時、バイヨンヌの外れに到着。めっちゃ天気悪い。バスに乗っている間はひたすら眠って過ごした。

 

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 ガレ・デ・バイヨンヌ駅。ここからサン・ジャン・ピエ・ド・ポー行きの電車に乗る予定だったのだが、目星をつけていた十四時台の列車がない……?

 あとから知ったのだがどうやらストライキがあったらしい。これはもうフランスの伝統みたいなもんだからしょうがないですね。チケットカウンターで話を聞くと、十八時四十分発のバスがあるらしいのでとりあえずそれに乗ることにした。到着がかなり遅れてしまうけど、ここで足止めを食らうよりは良い。

 

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 ひとまずお昼ご飯。

 ケバブ屋でチーズバーガーとポテトのセットを注文して六ユーロ(約八百三十円)だった。高い。オーストリアにいた時も、興味本位でマックを覗いてみたら普通のハンバーガーセットが十ユーロ(約千四百円)ぐらいだったし、まあそんなもんかなとは思いつつ……。


 食べ終わった後はアウトドア用品店で足りないもの(雨ガッパ、山登り用のスティック、懐中電灯)を買ったり、スーパーで当面の食糧を調達したりした。その間ずっと土砂降りの雨。酷い天気だ。

 

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 十六時半頃。ようやく空が晴れてきた。鞄の中をもう一度見直して要らないものを捨てたり、駅のカフェスペースで日記を書いたりしながら暇を潰す。

 そろそろ体力の限界を感じてきたが、まだまだ寝れないんだよな。この状態で明日また六時ぐらいに起きて二十キロ以上歩くんだと思うと笑えてくる。

 

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 十八時四十分。予定通りサン・ジャン・ピエ・ド・ポー行きのバスに乗車。出発直前にバス会社のおじさんが乗客全体に向かって「エビバディサンジャンピエドポー?」と聞いてきたのがおもしろかった。それに対してみんなが口々に「イエス」とか「ウィ」って答えていたのもなんとも言えないフェス感がある。おそらくこのバスに乗っているだいたいの人が巡礼者なのだろうな、と思った。

 

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△巡礼者の像


 一時間ほどバスに揺られてようやく目的地のサン・ジャン・ピエ・ド・ポーに到着した。私たちはここからカミーノの巡礼を始める。

※巡礼路には様々なルートがあり、今回私たちが歩くのはそのうちの一つ。ピレネー山脈のフランス側からスペインに向かって歩き始めるため、通称「フランス人の道」と呼ばれる。

 

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 まずは巡礼事務所に立ち寄り、クレデンシャル(巡礼証明書)を発行してもらった。巡礼者の目印であるホタテ貝も一緒にゲット。手続きをしてくれたおじいさんがとてもハッピーな感じの人でさっそくカミーノのことが好きになった。

 近くにあるアルベルゲ(巡礼者向けの宿)を紹介してもらい、早速向かう。

 

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 宿!

 レセプションの壁に巡礼路が貼ってあった。チェックイン手続きを終え、ようやくベッドへ……。二日ぶりのお布団、嬉しい!


 さっきまではヘトヘトに疲れていたのに、シャワーを浴びたら少し回復してだんだんやれる気がしてきた。夫にいたってはこれからビールを買いに行くとまで言っていたが、同室の人に「この辺のスーパー全部閉まってるよ〜」と教えてもらって断念。代わりにフリーの紅茶を飲んで今日はもう寝ることにした。おやすみなさい。