カミーノ 五感だけになりたい

十月二十一日(金)

 カミーノ巡礼二十三日目。わざと寝坊したくなる気持ちを抑えて七時半には起きた。個室の宿でのんびり羽を伸ばした後の早起きはつらい……。天気予報を見ると今日は一日雨が降らないようなので、それだけが救いだった。行くぞ二十一キロ!

 

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 八時出発。さよならレオン。いい街だった。

 マンホールからひょっこり顔を出しているライオンにも別れを告げる。

 

 ところでだけど、この町の名前はラテン語でローマ軍を意味する「レギーオ(Legio)」から来ているらしい。ライオンじゃないんだ。紋章もライオンなのに。

 

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 街が大きすぎて脱出するのがなかなか大変だ。矢印がない通りも多く、迷いながら歩いていたらけっこう時間がかかった。

 

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 一時間ぐらいかけてようやく郊外へ。

 

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 九時。バルで朝ご飯。紅茶とコーヒーを一杯ずつ頼んだだけなのにたくさんおまけしてくれた。心配になるぐらい優しい。

 

 現時点でどのぐらい進んだのか気になって地図アプリを見たら、いつの間にか次の町に突入していたことがわかった。これまでは町を抜けて何もないエリアをしばらく歩いてからまた別の町に辿り着くことが多かったけど、今日は切れ目なく建物が続いていて境目がわかりにくい。

 

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 三十分ぐらい休んでからバルを出た。基本は曇りだけど、時々霧のような小雨が降る。念のためうさたろにはビニール袋を被せた。人間はまだカッパを着なくても平気なレベルだ。

 

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 十時半。分岐路に来た。ここで北ルートと南ルートに分かれるようだ。どっちを行っても明日には合流するのだが、どうせならということで自然が多そうな南ルートを選ぶことにした。

 

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 にっこりマークの落書きを発見。

 

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 結局楽しい。辛いのは朝だけで、歩き始めるとやっぱりワクワクする。曇り空でも関係ないや。

 

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 十一時半。半壊しているバス停のベンチに座ってしばらく休憩した。体力的にはまだまだ行ける気もしたが、こないだも二人で話した通り、疲れ切る前に一息ついてのんびり進む方が良いという結論に。

 

 今日はあと十キロ!

 

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 葡萄畑でも、収穫が終わった後の麦畑でもない、ボサボサの荒野を歩く。向かい風が強く吹いていて気持ちよかった。このまま自我を捨てて五感だけの存在になりたい。

 

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 十二時。少しだけ晴れ間が見えてきた。太陽は消えたり現れたり。

 

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 今日で残り三百キロを切る。

 

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 晴れた!

 それだけのことがすごく嬉しい。


 歩きながら、カミーノが終わった後はどこに行くかという話をした。フランスは確定として、イタリアはどうするか。また、インドは行きたいというより呼ばれてる気がする等々。

 ちょっと前まではもうしばらく帰りたくないと思っていたのだが、このところ日増しに帰国後の生活が楽しみになってきており、少々予定を端折っても良い気がした。

 

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 十三時。残り四キロ地点でお昼ご飯。バルのカウンターに美味しそうな煮込み料理が並んでいるのを見つけてすかさず頼んだ。四種類全部盛りの欲張りプレートが一人七ユーロ。おまけでトマトのカプレーゼまでつけてくれた。こういう手作りっぽいおつまみを常備してるバルって意外と見かけないので、今日はたまたま出会えてラッキーだ。

 

 お店を切り盛りしているおばあちゃんがとても優しくて、パンフレットを指差しながら「ここからあと何キロで次の町だよ」と教えてくれたり、出る時にはクレデンシャルにスタンプを押してくれたりと、温かみのある接客も嬉しかった。

 

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 一時間ぐらい休んでからバルを出た。お腹がいっぱいすぎて動くのが苦しい。

 

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 強風の中をゴリゴリ進んでいく。


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 青空の見えるところが本当に綺麗だ。ここ数日の悪天候によりいつでも見れる景色ではないとわかったので、しっかり心に刻んでおく。


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 十五時。今日の目的地ビジャール・デ・マサリフェに到着。


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 宿にチェックインした後はいつも通り速攻でシャワーと洗濯を済ませた。あとはひたすらベッドに転がって過ごす。四人部屋には私たち以外まだ誰もおらず、気を抜きやすい雰囲気だ。

 

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 アルベルゲの一階がバルになっているので、夜はそこで軽く食べた。軽く……?ボロネーゼ一人前を普通に食べました。